令和3年(ネ)10049,10069【吹矢の矢】<本多> 逆転敗訴(非充足)

*本件発明の3個の課題解決に支障が生じ”得る”
⇒「楕円形」という構成要件は、長手方向両端の曲率が同じものに限定される。
⇒文言非充足、均等×

⇒特許権者逆転敗訴(原審・H31(ワ)2675)
*一審と控訴審判決で、3個の課題は同じ。

(判旨抜粋)
…請求項1の発明においては先端部が「球形」とされ,本件明細書でも「球形」と「楕円形」が使い分けられていることを踏まえると,少なくとも,本件発明の「楕円形」は…円形を含み得るような広い意味の語ではないことは理解される…。…
本件発明が解決しようとする課題は,従来技術について,矢の先端部に「かえし」が存在することにより生じていた,①矢を的から外すときに 丸釘のピンだけ的に残ってフィルムだけ引き抜かれてしまうという課題と,②ダブル突入の場合に後ろの矢を引き抜くときにフィルムが丸釘のピンから抜け,後ろの矢のピンが前の矢のフィルム内に残ってしまうという課題…のほか,矢の先端部の頭部と円柱部の位置のずれやフィルムの重なりにより生じていた,③上下方向の重心に偏りがあるという課題…であると解される。…曲率に差のある形状とした場合,具体的な形状次第では,的やダブル突入の場合の前の矢のフィルムに曲率の差のある形状の先端部が残ってしまうという可能性が別途生じ,ピン抜けの課題の解決に支障が生じ得る…。…曲率に差のある形状とした場合,具体的な形状次第では,円柱部との位置の調整が困難になったり,上下方向の重心に偏りがなく,かつ,先端部が相対的に重くなるといった特徴が十分に発揮できなくなり,重心の課題の解決に支障を生じ得る…。…
…構成要件B及びDの「楕円形」は,幾何学上の楕円の形状や,本件発明の実施例の形のような,楕円に近い形状であって長手方向の両端の曲率を同じくする形状は含むものと解される一方で,曲率に差のある形状は含まない…。…被告製品のピンの先端部は,「長手方向断面が,前部が曲率の緩い曲線形状,後部が略円錐形となるように円弧を描き,後部の円柱部との接合面が上下に角を有し,前記後部の角と角とを直線で結んだ形状である先端部」…であり, 曲率に差のある形状の一端を更に一定の範囲で切断した形状というべきものであるから,構成要件B及びDの「楕円形」には含まれない。

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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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