NAKAMURA & PARTNERS
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【商標法★★】標準文字からなる「HIRUDOMILD」の商標を「HIRUDO」部分と「MILD」部分からなる結合商標とみたうえで,分離・要部観察により「HIRUDO」部分だけを引用商標「Hirudoid」と比較して類否を判断することが許されるとして,両者は類似する(商標法4条1項11号該当)と判断し,非類似(不該当)と判断した無効審判の維持審決を取り消した事例

2021年10月22日

知財高判令和3年9月21日(令和3年(行ケ)第10029号)(本多知成裁判長)

 

◆判決本文

 

【判決要旨】

1.結合商標の分離・要部観察の許否の判断基準について

複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合等,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には,その構成部分の一部を抽出し,当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決)。

 
2.本件商標の分離・要部観察の許否について

本件商標は,「HIRUDO」の構成部分と「MILD」の構成部分からなる結合商標であるとみることができる。そして,「HIRUDO」の構成部分は,辞書等に採録された既成語ではなく一種の造語と理解され,対応する和名の「ヒルド」は,長期間にわたって原告商品の外には薬剤の名称には使用されておらず,薬剤の名称としてありふれたものではないことからしても,需要者に対し,商品の出所識別標識として強い印象を与えるといえる。これに対し,「MILD」の構成部分は,指定商品である薬剤との関係において,自他識別機能は極めて弱いというべきであり,「MILD」の構成部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じるとはいえない。そうすると,本件商標については,「HIRUDO」の文字のみを抽出し,この部分だけを引用商標と比較して類否を判断することも許されるというべきである。

 
3.本件商標と引用商標の類否について

引用商標「Hirudoid」を付した原告商品が60年以上にわたり販売され,非常に高い売上げを有していること等に照らすと,本件商標の出願日及び本件査定日時点において,需要者の間では,「ヒルド」やこれに対応する欧文字の「HIRUDO」は,「ヒルドイド」及び「HIRUDOID」を意味する単語として認識されており,「ヒルド」に対応する欧文字の「Hirudo」は「Hirudoid」を意味するものと認識されていたと認めるのが相当であるから,「HIRUDO」と引用商標は,いずれも「ヘパリン類似物質を配合した保湿剤であるヒルドイド」を想起させるということができ,観念を共通とするものと認められる。

以上を総合すると,本件商標と引用商標は,指定商品が同一で,外観,観念,称呼に共通している部分があり,同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというほかないから,両商標は類似すると認めるのが相当である。

 

【コメント】

1.結合商標の分離・要部観察の許否の判断基準について,最二小判平成20年9月8日(集民228号561頁)〔つつみのおひなっこや事件〕が,「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない」旨を判示し,その射程範囲が問題とされ,その後の下級審裁判例(知財高判令和元年9月12日(平成31年(行ケ)第10020号)〔SIGNATURE事件〕等)には,最一小判昭和38年12月5日(民集17巻12号1621頁)〔リラタカラヅカ事件〕を引用して,「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合」にも結合商標の分離・要部観察が許される旨を判示したものがあったところ,判決要旨1は,最二小判平成20年9月8日〔つつみのおひなっこや事件〕の上記各判断基準を,最一小判昭和38年12月5日〔リラタカラヅカ事件〕の上記判断基準の例示として位置付けたものである。

 
2.判決要旨2は,本件商標に判決要旨1に係る結合商標の分離・要部観察の許否の判断基準,特に最二小判平成20年9月8日〔つつみのおひなっこや事件〕の上記各判断基準をあてはめて,本件商標の分離・要部観察を肯定したものである。この点,同一の裁判所による同日の判決(知財高判令和3年9月21日(令和3年(行ケ)第10028号))でも,判決要旨2と同様に,標準文字からなる「ヒルドマイルド」の商標を「ヒルド」部分と「マイルド」部分からなる結合商標とみたうえで,分離・要部観察により「ヒルド」部分だけを引用商標「ヒルドイド」と比較して類否を判断することが許されるとされている。これに対し,同種の事案における異なる裁判所による近時の判決(知財高判令和3年8月19日(令和3年(行ケ)第10030号)及び知財高判令和3年8月19日(令和3年(行ケ)第10031号))では,判決要旨2と異なり,標準文字からなる「ヒルドソフト」及び「HIRUDOSOFT」の各商標を「ヒルド」及び「HIRUDO」各部分と「ソフト」及び「SOFT」各部分とに分離して観察することは相当ではないとされている。かかる相違は,主として,商標の類否の判断に当たり考慮され得る「取引の実情」(最三小判昭和43年2月27日(民集22巻2号399頁)〔氷山印事件〕)について,商標の指定商品又は指定役務一般に係るものに限られ,特定の商品又は役務に係るもの(本件では原告商品の販売名に係るもの)を含まないと解するかどうか,により生じたものではないかと思われる。

 
3.判決要旨3は,需要者の認識によれば分離・要部観察された本件商標の「HIRUDO」部分と引用商標「Hirudoid」とから「ヘパリン類似物質を配合した保湿剤であるヒルドイド」との共通の観念を想起させること等から,両商標が類似すると判断したものである。

 

【判決の抜粋】

1.結合商標の分離・要部観察の許否の判断基準について

「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合等,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には,その構成部分の一部を抽出し,当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)。」
 

2.本件商標の分離・要部観察の許否について

「本件商標が10文字からなるものでその一部のみを観察することも想定可能な程度の長さを有していること,その構成中の『MILD』の文字部分は,…『物事の程度や人の性質・態度などが穏やかなさま。』『刺激の少ないさま。』などを意味する英単語として広く知られ,また,会話中においても日常的に使用されており,ひとまとまりの語句として強く認識され得るものであることからすると,本件商標は,『HIRUDO』の構成部分と『MILD』の構成部分からなる結合商標であるとみることができる。」

「そして,『HIRUDO』の構成部分は,我が国において周知されているものではないから一種の造語と理解され,同構成部分に対応する和名の『ヒルド』は,…長期間にわたって原告商品の他には薬剤の名称には使用されておらず,薬剤の名称としてありふれたものではないことからしても,需要者に対し,商品の出所識別標識として強い印象を与えるといえる。これに対し,『MILD』の構成部分は,…薬剤の分野においては,薬の効果や刺激が弱いことを意味するものとして理解され,その和名である『マイルド』は薬のブランド名等とともに商品名に用いられることが相当程度にあるから,指定商品である薬剤との関係において,自他識別機能は極めて弱いというべきであり,『MILD』の構成部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じるとはいえない。

そうすると,本件商標については,『HIRUDO』の文字のみを抽出し,この部分だけを引用商標と比較して類否を判断することも許されるというべきである。」

「したがって,本件商標については,『HIRUDOMILD』の外観及び『ヒルドマイルド』の称呼のほか,『HIRUDO』の外観及び『ヒルド』の称呼が生じるものとして引用商標と比較することが相当である。」

 
3.本件商標と引用商標の類否について

「平成29年頃までには,需要者の相当割合の者が,『ヒルドイド』という造語及びこれに対応する欧文字の『Hirudoid』から,『ヘパリン類似物質を配合した保湿剤』である原告商品を想起するものと認められ,長期間をかけて形成されたこの状況は,本件商標の出願日及び本件査定日においても継続していたものと認めるのが相当である。」

また,「本件商標の出願日及び本件査定日時点において,需要者の間では,『ヒルド』やこれに対応する欧文字の『HIRUDO』は,『ヒルドイド』及び『HIRUDOID』を意味する単語として認識されており,『ヒルド』に対応する欧文字の『Hirudo』は『Hirudoid』を意味するものと認識されていたと認めるのが相当であるから,『HIRUDO』と引用商標1は,いずれも『ヘパリン類似物質を配合した保湿剤であるヒルドイド』を想起させるということができ,観念を共通とするものと認められる。」

「上記を総合すると,本件商標と引用商標1は,指定商品が同一で,外観,観念,称呼に共通している部分があり,同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというほかないから,両商標は類似すると認めるのが相当である。」

 

 

【Keywords】商標の類否判断の方法,全体観察,結合商標,分離観察,要部観察,「Hirudoid」,「ヒルドイド」,「Hirudo」,「ヒルド」,「HIRUDOMILD」,「ヒルドマイルド」,「HIRUDOSOFT」,「ヒルドソフト」

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

 

文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)

本件に関するお問い合わせ先:k_iida@nakapat.gr.jp

 

 
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