<論稿>「令和2年の審決取消訴訟の概況」

近時の知財重要判決がコンパクトに纏まっている

<掲載例>
令和元年(行ケ)10174【エアロゾル発生装置】

課題を踏まえて,クレーム文言を限定解釈
⇒サポート要件〇

課題を解決できる構成に限りクレームされていることとなり,サポート要件に適合する。

(判旨抜粋)
サポート要件の判断は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比して行うものであるが,対比の前提として特許請求の範囲から発明を認定するに当たり,特許請求の範囲に記載された発明特定事項の意味内容や技術的意義を明らかにする必要がある場合に,必要に応じて明細書や図面の記載を斟酌することは妨げられないというべきであり,当事者が引用するリパー ゼ判決は,そのことを禁じるものと解することはできない。そして,本件においては,本件明細書の記載に照らすと,特許請求の範囲の請求項1及び15について,前記(1)で認定したとおりのものであると理解できるのであり,それを基に特許請求の範囲と発明の詳細な説明を対比すると,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(イ) 原告は,この点について,サポート要件の判断に当たって,発明の詳細な説明に基づく特許請求の範囲の限定解釈が許されるとすると,特許請求の範が文言上どれだけ広くてもサポート要件違反になることがなくなり,その趣旨が没却されるし,侵害の場面で広範な特許請求の範囲に基づき充足を主張でき,二重の利得を得ることになるから不当であると主張する。しかし,サポート要件の判断に当たって,発明の詳細な説明を参酌するからといって,特許請求の範囲に発明の詳細な説明を参酌して認められる発明の内容が,発明の詳細な説明によってサポートされていないときは,サポート要件違反になること(例えば,特許請求の範囲の文言に発明の詳細な説明を参酌して認められる発明の内容が,AとBの両方を含むものであるが,実施例等としては,BしかないときにAはサポートされていないと判断する場合があることなど)はあり得るのであって,常にサポート要件違反を免れるということにはならない。また,特許発明の技術的範囲を定めるに当たり,明細書及び図面を考慮するとされていること(特許法70条2項)からすると,原告のいう二重の利得が発生するとはいえない。

089665_hanrei.pdf (courts.go.jp)
令和2年の審決取消訴訟の概況 (jpaa.or.jp)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)