進歩性~本件発明と主引例の課題の共通性④
平成28年(行ケ)10079 【タイヤ】<高部>
*本願発明と主引例の具体的課題が異なる
⇒当該数値に着目することは容易想到でない
本願発明…引用発明…性能を発揮できるようにするための具体的な課題が異なり,表面層に関する技術的思想は相反する… 。…引用例1に接した当業者は…当該比率を所定の数値範囲とすることを想到するものとは認め難い
(判旨抜粋)
【請求項1】…Ms/Miは0.01以上1.0未満であり,前記表面ゴム層の厚さは0.01mm以上1.0mm以下であり,…前記表面ゴム層のゴム弾性率Msが前記内部ゴム層のゴム弾性率Miに比し低いことを特徴とするタイヤ
…本願発明は,使用初期においても,タイヤの氷上性能を発揮できるように,弾性率の低い表面ゴム層を配置するのに対し,引用発明は,容易に皮むきを行って表面層を除去することによって,速やかに本体層が所定の性能を発揮することができるようにしたものである。したがって,使用初期においても性能を発揮できるようにするための具体的な課題が異なり,表面層に関する技術的思想は相反するものであると認められる。…よって,引用例1に接した当業者は,表面外皮層Bを柔らかくして表面外皮層を早期に除去することを想到することができても,本願発明の具体的な課題を示唆されることはなく,当該表面外皮層に使用初期においても安定して優れた氷上性能を得るよう,表面ゴム層及び内部ゴム層のゴム弾性率の比率に着目し,当該比率を所定の数値範囲とすることを想到するものとは認め難い。また,ゴムの耐摩耗性がゴムの硬度に比例すること…や,スタッドレスタイヤにおいてトレッドの接地面を発泡ゴムにより形成することにより氷上性能あるいは雪上性能が向上すること…が技術常識であるとしても,表面ゴム層を非発泡ゴム,内部ゴム層を発泡ゴムとしつつ,表面ゴム層のゴム弾性率を内部ゴム層のゴム弾性率より小さい(表面を内部に比べて柔らかくする。)所定比の範囲として,タイヤの使用初期にトレッドの接地面積を十分に確保して,使用初期においても安定して優れた氷上性能を得るという技術的思想は開示されていないから,本願発明に係る構成を容易に想到することができるとはいえない。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/259/086259_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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