進歩性~本件発明と主引例の課題の共通性⑤

 

平成29年(行ケ)10089、10090【医療用軟質容器事件】<高部>

 

*補正事項が、発明の課題との関係で本質的(必要不可欠な要素)でない ⇒ 補正OK⇒発明特定事項削除OK

 

※補正事項: 指を挿入するための「貫通路」を形成するための1対の開閉操作部⇒「貫通路」を削除

 

(判旨抜粋)

…課題解決手段として採用された開閉操作部の作用機能に関する本件当初明細書等の記載によれば,当業者は,開閉操作部は片方の端部のみが開放されていれば,本件出願に係る発明の課題解決手段として十分であることを容易に理解できる。さらに,本件当初明細書等に記載された貫通路は,右側「または」左側から指が「挿入」される旨説明されるにとどまり…,右側及び左側から指が挿入される必要があることや,挿入された指が他端から突出する必要があることを説明する記載はない。…

このように,本件当初明細書等の記載から,当業者は,開閉操作部の片方の端部のみが開放されている構成を容易に認識でき,このような構成でも,本件出願に係る発明の課題解決手段として十分であることを容易に理解でき,さらに,開閉操作部の双方の端部が開放された構成に限定されていないことも理解できる。したがって,本件当初明細書等において,開閉操作部について貫通路と表現され,開閉操作部が貫通している実施例しか記載されていないとしても,当業者であれば,本件当初明細書等の記載から,片方の端部が閉じられた開閉操作部を有する医療用軟質容器の構成も認識できるというべきである。

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/523/087523_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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