令和4年(ネ)10061【マグネットスクリーン装置】<本多>
①周知慣用技術の付加転換+設計事項
⇒拡大先願違反
「乙10公報には…取手がある旨の記載はない。…出願当時,…ケースに取手を設けることは周知・慣用手段…。…運搬の便宜等のため、必要に応じて適宜選択できる…。」
②完全に収まらなくても「収納」に当たる
⇒充足
(判旨抜粋)
①…乙10公報には、押さえ部を固定した構成が開示されている…。…
乙10公報には押さえ部が 回転可能である旨の記載はない。…移動するシート状のものと接触する部分を…回転可能なものとすること、及び、シートとの摺動接触に起因してローラーが回転するものとすることは…出願当時、周知・慣用手段であり、これは本件特許1のようなマグネットスクリーン装置の分野においても同様であった…。…横断面視の形状が円弧面である押さえ部を回転可能とし、その結果、押さえ部に接触しながら巻き出され又は巻き取られる スクリーンの摺動接触に起因して押さえ部が回転するものとすることは、当業者が押さえ部の構成の工夫として適宜選択する範囲のものにすぎない…。…
乙10公報には…ケーシングに相当する「収納ケース」に取手がある旨の記載はない。…出願当時、…マグネットスクリーン装置の技術分野において、ケースに取手を設けることは周知・慣用手段であったと認められる。そして、引用発明1-1において収納ケースに取手を設けることは、当業者が、運搬の便宜等のため、必要に応じて適宜選択できることであると認められる。
②本件明細書1には、長尺部材の位置に関し、発明の一態様において、「巻回状態のスクリーンシート10に隣接して長尺部材30も同様にケーシング40内に収められている。」(【0044】)、「長尺部材30は、ケーシング40の開口部46に位置付けられている。」(【0048】)といった記載があり、【図9】には長尺部材がケーシングの内部に位置する構成が記載されているものの、落下や振動、衝突、汚損から保護するために長尺部材をケーシングの内部に収納する旨の記載はなく、本件明細書1のその余の記載に照らしても、本件再訂正後発明1において、長尺部材が、ケーシングの外部に露出することなく、衝撃や汚損から可及的に保護されるよう、その中にきちんと入っている状態にあることを要すると解することはできない。
…被控訴人製品においては、本体ケースの内部に押さえローラーの大部分が入れられているから、長尺部材がケーシングに収納されているということができる。…充足する。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/775/091775_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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