令和3年(ネ)10088、令和4年(ネ)10014【情報通信ユニット】
<損害論>102条2項の推定覆滅~競合品の存在により、15%覆滅
※「顧客の個別的な要望に応えた」「在庫を確保した」「保守サービス内容をウェブサイトに明示した」等は、102条2項の推定を覆すだけの格別な営業努力とは認められない!!
(判旨抜粋)
<覆滅事由>
本件各発明の顧客吸引力がないか、乏しいとする点について 控訴人は、前記第2の3⑴ウ c⒜のとおり、原判決が顧客吸引力を 認めた本件各発明の効果①及び②は、本件各発明の顧客吸引力を高める ものではない旨主張する。
しかし、本件各発明は、上記効果①と効果②が相まって、コンパクト さと通信速度という一体として評価すべき顧客誘引力を有するといえ、 現に、控訴人の営業担当者による週報(乙54)によれば、控訴人の開 発過程では、控訴人が各被告製品の前に販売していた製品が、被控訴人 製品に比べ「コンパクトさ」と「通信速度」で劣っていたため競り負けた事例があることが認められるのであるから、控訴人の主張は採用でき ない。
市場の同一性がないとする点について 控訴人は、前記第2の3⑴ウ c⒝のとおり、各被告製品と原告製品 は、直接の取引先に関し基本的に競合せず、エンドユーザーにおいても 15 ほとんど競合しない旨主張する。
しかし、原告製品と各被告製品は、J IS規格のコンセントプレートに対応した壁埋込型の情報コンセント型 無線LANアクセスポイントとして互換性が高いばかりでなく、平成2 8年から令和3年の控訴人の販売個数●●●●●●●個のうち,●●● ●●●個が被控訴人の販売先に対するものであったことが認められるから(乙48、甲78)、市場の同一性がないとの主張は採用できない。
競合品の存在について 控訴人は、前記第2の3⑴ウ c⒞のとおり、甲56製品以外にも、 原告製品の競合品は存在する旨主張する。
確かに、証拠(甲78、乙60の2ないし4、乙61)によれば、エ 25 レコムは、甲56製品以外にも、原告製品と競合し得るJIS規格対応 の壁埋込式情報コンセント型無線LANアクセスポイントを3種類販売 43 し、知名度を有し、原告製品に比べ価格競争力を有することが認められ る。
また、証拠(甲78、乙61ないし66)によれば、Ruijie社 が、原告製品と競合し得る壁埋込式情報コンセント型無線LANアクセ 5 スポイントを令和2年以降販売し、令和2年の販売実績は1.7億円、 令和3年1月から11月までの販売実績が5.79億円であることが認 められる。
一方、原告製品の売上げは、●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●● 上記の競合品(甲56製品を含む。)の販売状況と原告製品の売上げを 総合すれば、これらの競合品の存在をもって特許法102条2項に基づ く損害額の推定の覆滅事由として考慮すべきであり、その割合としては15%を相当と認める。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/319/091319_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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