【特許侵害訴訟】控訴審の逆転充足❺【改修引戸装置事件】
平成29年(ネ)10033<鶴岡>
発明の課題=有効開口面積を減少することがない
⇒「ほぼ同じ高さ」=段差は含まない
⇒非充足
原審・平成26年(ワ)7643<東海林>
発明の課題=有効開口面積が減少する…程度が従来技
術と比べて相当程度少ない
⇒充足
(判旨抜粋【控訴審】)
…構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」とは,「取付け補助部材」の高さ寸法を既設下枠の寸法,形状に合わせたものとすることにより,「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを,その間に高さの差が全くないという意味での「同じ高さ」とする構成を念頭に,しかし,そのような構成にしようとしても寸法誤差,設計誤差等により両者が完全には「同じ高さ」とならない場合もあり得ることから,そのような場合をも含めることを含意した表現であると理解される。そうすると,「取付け補助部材」により「改修用下枠」を支持することで「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「同じ高さ」にしようとはしておらず,その結果,「背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」との「高さ」の差が明らかに「段差」と評価される程度に至っている場合には,もはや構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」に含まれない…。なぜなら,本件発明は「経年変化によって老朽化した集合住宅などの建物」の「リフォーム」に関するものであるところ…,リフォームに際して「段差」と評価されるものを設けるか否かは当然に考慮されるべき事項であり,明らかに「段差」と評価されるものを敢えて設けたにもかかわらず,「ほぼ同じ高さ」に含まれると解することは,当業者の一般的な理解とは異なるからである。…バリアフリー住宅の基準として,設計寸法で3mm 以下の一般床部の段差形状は「段差なし」と評価されている…。…
被告各装置には,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が5mm 未満のものは存在せず,その理由は,控訴人が意識的に既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端との高さに5mm 以上の差を設けていることによるものと認められる。そうすると,被告各装置は,「既設下枠の背後壁の上端」と「改修用下枠の上端」とを「同じ高さ」にしようとはしておらず,その結果,両者の高さの差がバリアフリーの観点から明らかに「段差」と評価される程度に至っていることから,構成要件Eを充足せず,本件発明の技術的範囲に含まれない…。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/804/087804_hanrei.pdf
https://pbs.twimg.com/media/EvIC3KNUYAEv4HD?format=jpg&name=small
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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