【特許侵害訴訟】控訴審の逆転充足❹【椅子式エアーマッサージ機事件】
平成17年(ネ)10047<塚原>
⇒文言非充足
⇒減縮補正したクレームに均等論〇!!(東京の高裁では唯一)
⇒大阪地裁・大阪高裁では多数
平成29年(ワ)18184「骨切術用開大器」事件<佐藤>
原審・平成13年(ワ)3485<飯村>
⇒文言充足
(判旨抜粋〔控訴審〕)
〔第5要件〕
控訴人は,本件特許5の出願当時,マッサージ機の脚受部に中間壁を設けることや,身体の各部との接触を緩和する材料としてチップウレタン等を採用することが公知の技術であったにもかかわらず,被控訴人は,袋体が各脚部の両側に配設される構成のみを選択したのであるから,脚部の一側方のみが袋体である構成を本件発明5から意識的に除外したものと評価できると主張する。
しかしながら,特許侵害を主張されている対象製品に係る構成が,特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたというには,特許権者が,出願手続において,当該対象製品に係る構成が特許請求の範囲に含まれないことを自認し,あるいは補正や訂正により当該構成を特許請求の範囲から除外するなど,当該対象製品に係る構成を明確に認識し,これを特許請求の範囲から除外したと外形的に評価し得る行動がとられていることを要すると解すべきであり,特許出願当時の公知技術等に照らし,当該対象製品に係る構成を容易に想到し得たにもかかわらず,そのような構成を特許請求の範囲に含めなかったというだけでは,当該対象製品に係る構成を特許請求の範囲から意識的に除外したということはできない…。そうすると,控訴人の主張するように,本件特許5の出願当時,マッサージ機の脚受部に中間壁を設けることや,身体の各部との接触を緩和する材料としてチップウレタン等を採用することが公知の技術であり,被控訴人が,その特許出願手続において,脚載置部の側壁の一方に空気袋を配設し,他方にチップウレタン等を配設する構成を特許請求の範囲に含めることが可能であったとしても,そのことから直ちに,そのような構成が本件発明5に係る特許請求の範囲から意識的に除外されたということはできない。
〔第1要件〕
…本件発明5は,「従来のものにおいては,マッサージ中は身体は自由状態となっているため,圧搾空気の給排気に伴う座部の袋体の膨縮にしたがって身体も上下動することになり,腿部を含む脚部,尻部の筋肉をストレッチしつつマッサージをすることができず,より効果的なマッサージをするという面では満足のいくものではないという問題があった。」ことを踏まえ,この技術課題を解決するために,座部用袋体と脚用袋体への圧搾空気の供給を同期させ,膨脹した脚用袋体によって両側から脚部を挟持しつつ,座部用袋体を膨脹させて使用者の身体を押し上げることにより,腿部及び尻部をストレッチ及びマッサージするものであると認められる。本件発明5の上述した課題,構成,作用効果に照らすと,本件発明5の本質的部分は,座部用袋体及び脚用袋体の膨脹のタイミングを工夫することにより,脚用袋体によって脚部を両側から挟持した状態で,座部用袋体を膨脹させ,脚部及び尻部のストレッチ及びマッサージを可能にした点にあるというべきであり,そのために必要な構成要素として,空気袋を膨脹させて使用者の各脚を両側から挟持するという構成には特徴が認められるとしても,使用者の各脚を挟持するための手段として,脚載置部の側壁の両側に空気袋を配設するのか,片側のみに空気袋を配設し,他方にはチップウレタン等の緩衝材を配設するのかという点は,発明を特徴付ける本質的部分ではない…。
〔第3要件〕
控訴人は、脚載置部の側壁の両側に空気袋を配設した控訴人製品1、2を当初製造、販売し、その後、側壁の一方に配設された空気袋を緩衝材であるチップウレタン等に置換した控訴人製品3、4を製造、販売しているところ、チップウレタン等には柔軟性があることは公知であるから、当業者であれば、控訴人製品3、4の製造等の時点において、脚載置部の側壁の一方に配設された空気袋をチップウレタン等に置換しても空気袋を両側に配設した場合と同様の作用効果を奏することは、容易に推考し得たというべきである。
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※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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