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【特許★】審決取消請求事件(相違点に係る構成が「ゲーム上の取決めにすぎない」として,公知技術等を用いた論理付けを示さないまま容易想到と判断することは相当でないとして、審決を取り消した事例。⇒進歩性〇)

2021年02月18日

-知財高判令和元年(行ケ)第10085号「ゲームプログラム」事件<グリー>(鶴岡裁判長)-

 

◆判決本文

 

【本判決の要旨、考察】

1.特許請求の範囲

「A 他のコンピュータと通信可能に接続されるコンピュータを,

B それぞれに対して,キャラクタの選択に用いられるポイントおよび複数のパラメータが,キャラクタ毎に個別に設定された複数のキャラクタカードを互いに隣接配置した状態で第1フィールドに表示する第1制御手段と,

C 前記第1フィールドに表示された複数のキャラクタカードのうち,前記ポイントが時間の経過に伴って加算されるポイント総量(1)以下であるキャラクタカードをプレイヤの操作によって選択可能に表示する第2制御手段と,

D 選択されたキャラクタカードを前記第1フィールドから除去して,対応するキャラクタを前記第1フィールドとは異なる第2フィールドに配置する第3制御手段と,

E プレイヤの操作によって選択されたキャラクタカードに設定されたポイントを前記ポイント総量から減算された新たなポイント総量として表示する第4制御手段と,として機能させ,

F 前記第2フィールドへのキャラクタカードの配置に伴い,前記第1フィールドとは異なる第3フィールドに配置されていた追加のキャラクタカードが, 前記第1フィールドに補充されるように表示され,

G 前記選択されたキャラクタカードに対応するキャラクタは(3),設定された前記複数のパラメータに基づいて(2),前記第2フィールドにおいて敵キャラクタを攻撃し,

H 前記新たなポイント総量が時間の経過に伴って加算され(1),前記新たなポイント総量以下のポイントが設定された前記第1フィールド内のキャラクタカードをプレイヤの操作によって引き続き選択可能である,

I 対戦ゲーム制御プログラム。」

 

2.(判旨抜粋)

(1)相違点に関する部分

「〈相違点6〉 第3フィールドに配置されていた追加のキャラクタカードが,第1フィ ールドに補充されるように表示することに関して,本願発明においては「 第2フィールドへのキャラクタカードの配置」に伴うものであるのに対して,引用発明においては「第11領域から,第7領域へのカードの配置」に伴うものである点。」

 

(2)審決の判断に関する部分

「…相違点6に係る構成が容易想到であると判断するに当たっての審決の論理構成は,次のとおりである。

①『手持ちのカード』が他のフィールド又は領域への移動に伴いその数を減じたときに『手持ちのカード』を補充するという構成を採用するに当たって,どのフィールド又は領域への移動を補充の契機とするかはゲーム上の取決めにすぎない。

② よって,第7領域への移動をカードの補充の契機とする引用発明の構成を,第3領域(敵ヒーローへの攻撃を行うための領域)への移動を補充の契機とする本願発明の構成に変更することは,ゲーム上の取決めを変更することにすぎない。

③ よって,引用発明の構成を本願発明における構成とすることも,ゲーム上の取決めの変更にすぎず,当業者が容易に想到し得た。」

 

(3)審決取消事由の判断に関する部分

「…引用発明におけるカードの補充は,本願発明におけるそれとの対比において,補充の契機となるカードの移動先の点において異なるほか,移動されるカードの種類や機能においても異なっており,相違点6は小さな相違ではない。そして,かかる相違点6の存在によって,引用発明と本願発明とではゲームの性格が相当程度に異なってくるといえる。したがって,相違点6に係る構成が『ゲーム上の取決めにすぎない』として,他の公知技術等を用いた論理付けを示さないまま容易想到と判断することは,相当でない。」

 

3.若干の考察

一般に、「人為的な取り決め」のみでは発明該当性(特許法29条1項柱書)がないと考えられており、ハードウェアが介在していても、「その本質が専ら人為的な取り決めそのものに向けられているもの」は発明該当性が否定される。(※近時の裁判例としては、例えば、知財高判令和1年(行ケ)第10110号「電子記録債権の決済方法」<鶴岡>)

もちろん、「その本質が専ら人為的な取り決めそのものに向けられている」か否かの判断は事案毎であるが、そうはいっても、ゲームやアミューズメントの発明については特許庁の発明該当性判断は極めて柔軟であり、世界的に見ても日本でのみ発明該当性が認められるであろうという発明も多い。実際、本件も、特許庁の不服審判に差戻後、発明該当性が議論されることなく特許査定となった。

(米国ではAlice連邦最高裁判決2014年6月19日は、「第2ステップ」として、抽象的アイデアを保護適格性がある発明に変換するinventive conceptがクレーム中に存在する必要があり、それは抽象的アイデアよりsignificantly moreである必要がある。)

(欧州においては,クレームに,技術的手段として何らかのハードウェアを明示することにより,比較的容易に主題適格性の要件を満たすことができる。しかし,発明の技術的性質に寄与しない特徴は,進歩性判断でクレームに係る発明と先行技術とを対比するに際し考慮されない。(「日米欧におけるソフトウエア関連発明の特許取得について(1)」パテント vol. 63 No. 10 p.45-56))

このような柔軟な判断の是非は別として、特許庁の分野による判断傾向を把握しておけば、実務上有用なのではないかと思われる。

本判決のあてはめを確認すると、「相違点6は小さな相違ではない。そして,かかる相違点6の存在によって,引用発明と本願発明とではゲームの性格が相当程度に異なってくる」と判示しているが、このような要素は、発明該当性とは関係ないと思われる。本裁判例は、あくまで新規性・進歩性判断の文脈であるから誤りはなく、発明該当性が俎上に登っていたならば、異なるメルクマール及び判断がなされた可能性はあったと思料する。(もっとも、本件は、特許庁の不服審判に差戻後、発明該当性が議論されることなく特許査定となった。)

以下に紹介する、知財高判令和1年(行ケ)第10110号「電子記録債権の決済方法」も併せて検討することで、「人為的な取り決め」にハードウェアが絡む発明の発明該当性について検討することができると思われる。

 

【参考となる別の裁判例~知財高判令和1年(行ケ)第10110号「電子記録債権の決済方法」<鶴岡>】

⇒従来と同じ取扱いは本願発明の技術的意義ではないとして、「その本質が専ら人為的な取り決めそのものに向けられているもの」であるという理由で発明該当性を否定した事案。

(判旨抜粋)

「本願発明は,従来から利用されている電子記録債権による取引決済における割引について,債権者をより手厚く保護するため,割引料の負担を債務者に求めるよう改訂された下請法の運用基準に適合し,かつ,債務者や債権者の事務負担や管理コストを増大させることなく,債務者によって割引料の負担が可能な電子記録債権の決済方法を提供するという課題を解決するための構成として,本願発明に係る構成を採用したものである。一方,本願発明の構成のうち,「(所定の)金額を(電子記録債権の)債権者の口座に振り込むための振込信号を送信すること」,及び「(所定の)金額を電子記録債権の債務者の口座から引き落とすための引落信号を送信すること」は,電子記録債権による取引決済において,従前から採用されていたものであり,また,「電子記録債権の額を(電子記録債権の)債務者の口座から引き落とす」ことは,下請法の運用基準の改訂前後で,取扱いに変更はないものである。そうすると,本願発明は,「電子記録債権の額に応じた金額を債権者の口座に振り込む」ことと,「前記電子記録債権の割引料に相当する割引料相当料を前記電子記録債権の債務者の口座から引き落とす」こととを,前記課題を解決するための技術的手段の構成とするものであると理解できる。…

本願発明は,電子記録債権を用いた決済方法において,電子記録債権の額に応じた金額を債権者の口座に振り込むとともに, 割引料相当料を債務者の口座から引き落とすことを,課題を解決するための技術的手段の構成とし,これにより,割引料負担を債務者に求めるという下請法の運用基準の改訂に対応し,割引料を負担する主体を債務者とすることで,割引困難な債権の発生を効果的に抑制することができるという効果を奏するとするものであるから,本願発明の技術的意義は,電子記録債権の割引における割引料を債務者負担としたことに尽きる…。…本願発明の技術的意義は,電子記録債権を用いた決済に関して,電子記録債権の割引の際の手数料を債務者の負担としたことにあるといえるから,本願発明の本質は,専ら取引決済についての人為的な取り決めそのものに向けられたものであると認められる。したがって,本願発明は,その本質が専ら人為的な取り決めそのものに 向けられているものであり,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則を利用するものではないから,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しない。」

 

——————————————————————————

【判示事項(抜粋)~進歩性に関する判示部分】

6 取消事由2-2(相違点6の容易想到性の判断誤り)について

〔原告の主張の要旨〕

本願発明では,敵キャラクタへの攻撃を行う第2フィールドへの配置に伴い,キャラクタカードが第1フィールドに補充される。これに対し,引用発明では,マナを増やすための第7領域への配置に伴い,新たなカードが第11領域に補充されるが,敵ヒーローへの攻撃を行うための第3領域への配置に伴い,新たなカードが第1領域に補充されることはない。

第3領域にカードを配置することで敵を攻撃するという技術的事項が開示された引用発明において,第3領域とは異なる目的の第7領域にカードを配置させることで敵キャラクタへの攻撃を行うように引用発明を変更することや,攻撃のために第3領域にカードを配置した際にカードが補充される構成に置き換えることについての動機付けはないし,そもそもそのように変更する必要性もない。また,仮に相違点6に係る本願発明の構成がゲーム上の取決めであったとしても,そのことをもって直ちに,本願発明が引用発明に基づき容易想到であったということにはならない。

よって,引用発明に記載の構成を相違点6に係る構成に置き換えることが容易想到であるとする審決の認定は,本願発明を見てなされた後付けの議論にすぎず,相違点6にかかる構成が容易想到であるとした審決の認定は誤りである。

 
〔検討〕

以下のとおり,原告の上記主張を採用することができるので,取消事由2-2に係る原告の主張には理由がある。

(1) 相違点6に係る構成が容易想到であると判断するに当たっての審決の論理構成は,次のとおりである。

①「手持ちのカード」が他のフィールド又は領域への移動に伴いその数を減じたときに「手持ちのカード」を補充するという構成を採用するに当たって,どのフィールド又は領域への移動を補充の契機とするかはゲーム上の取決めにすぎない。

② よって,第7領域への移動をカードの補充の契機とする引用発明の構成を,第3領域(敵ヒーローへの攻撃を行うための領域)への移動を補充の契機とする本願発明の構成に変更することは,ゲーム上の取決めを変更することにすぎない。

③ よって,引用発明の構成を本願発明における構成とすることも,ゲーム上の取決めの変更にすぎず,当業者が容易に想到し得た。

 
(2) しかしながら,審決の上記論理構成は,次のとおり不相当である。

ア 審決は,引用発明の認定に当たって「カード」の種類に言及していないが,CARTEによれば,第10領域から第11領域へのカードの補充の契機となるのは,「シャードカード」(深緑の地色に白抜きで円形と三日月形が表示されているカード)の第11領域から第7領域への移動及び第7領域から第6領域への移動である(00分39秒~40秒,00分49 秒~50秒等)。

 そして,「シャードカード」は,専ら「マナ」(カードのセッティングやスキルの発動に必要不可欠なエネルギー)を増やすために用いられるカードであり,その移動先はシャードゾーン(第7領域)又はマナゾーン(第6領域)に限られ,敵との直接の攻防のためにアタックゾーン(第3領域)又はディフェンスゾーン(第4領域)に移動させられることはない。これに対し,「クリーチャーカード」は,敵のクリーチャーやヒーローとの攻防に直接用いられるものであって,第11領域から適宜アタックゾーン(第3領域)又はディフェンスゾーン(第4領域)に移動させられ,攻防の能力を表す「APの値」及び「HPの値」を有している。

イ このように,引用発明におけるカードの補充は,本願発明におけるそれとの対比において,補充の契機となるカードの移動先の点において異なるほか,移動されるカードの種類や機能においても異なっており,相違点6は小さな相違ではない。そして,かかる相違点6の存在によって,引用発明と本願発明とではゲームの性格が相当程度に異なってくるといえる。したがって,相違点6に係る構成が「ゲーム上の取決めにすぎない」として,他の公知技術等を用いた論理付けを示さないまま容易想到と判断することは,相当でない。

 
(3) 被告の主張について被告は,手持ちのカードの数が減じたときにこれを補充する構成(乙7,乙8)とするかこれを補充しない構成(乙9,乙10)とするかは,ゲーム制作者がゲームのルールを決める際に適宜決めるべき設計的な事項にすぎないから,引用発明において,第3領域(アタックゾーン)にカードを配置した場合でも第11領域の手持ちカードが補充されるようにすることは,何ら技術的な困難性があることではなく,まさに,提供しようとするゲーム性に応じたゲーム上の取決めにすぎない旨主張する。

しかしながら,相違点6は,ゲームの性格に関わる重要な相違点であって,単にルール上の取決めにすぎないとの理由で容易想到性を肯定することはできないことは,(2)において説示したとおりである。

 

原告(特許出願人):グリー株式会社

被告(特許庁):特許庁長官

 
執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュースの原稿ではありません。)

監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)

 

本件に関するお問い合わせ先: h_takaishi@nakapat.gr.jp

〒100-8355 東京都千代田区丸の内3-3-1新東京ビル6階

中村合同特許法律事務所

 
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