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【特許★】それぞれの既存部品が課題解決不可欠品とされた。例外的とはいえない範囲の者が特許権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識・認容していれば足りる。⇒約4分の1で特許法101条2号の間接侵害成立

2023年07月25日

-知財高判平成31年(ネ)第10007号「プログラマブル・コントローラにおける異常発生時にラダー回路を表示する装置」控訴事件<菅野裁判長>-

 

◆判決本文

 

【本判決の要旨、若干の考察】

1.請求項1(本件第1特許、特許第3700528号)

 1A 機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置であって,

 1B 前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムと,

 1C そのプログラムで異常現象の発生がモニタされたときにモニタされた異常現象に対応する異常種類を表示する手段と,

 1D 表示された1又は複数の異常種類からの異常種類に係る異常名称をタッチして指定するタッチパネルと,

 1E 異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段と,を有し,

 1F 前記ラダー回路を表示する手段は,表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと,表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し,表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段を含む

 1G ことを特徴とする表示装置。

 

2.間接侵害(特許法101条2号)について

(1)既存部品の組み合わせと「課題解決不可欠品」の認定

本判決は、以下のとおり判示して、既存部品(「プログラマブル表示器本体」と「そのソフトウェア」)を組み合わせた発明において、それぞれの既存部品が課題解決不可欠品であるとして、特許法101条2号の間接侵害を認めた。

『(エ)被告製品3について

被告製品3は、拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能等部分を格納しており、これが被告表示器Aにインストールされることによって、被告表示器Aにおいて回路モニタ機能等の使用が可能となるものである。そして、被告製品3の回路モニタ機能等部分とこれを除く他の部分とは、物理的にかつ機能的にも一体性を有するものと認められる。

そうすると、被告製品3は、全体として、本件発明1の特徴的技術手段を直接もたらす特徴的部品であると認められる。

したがって、被告製品3は本件発明1の課題解決不可欠品に当たる。

(オ)被告表示器Aについて

本件発明1が新たに開示する特徴的技術手段である、異常発生時のタッチによる接点検索との構成は、被告表示器Aと被告製品3の双方があって初めて実現し得る構成である。そして、一審被告が自認するとおり、回路モニタ機能等を実現するために被告表示器AにインストールできるOSは被告製品3のみであり、同機能の実現のために被告製品3がインストールできる表示器は被告表示器Aのみであるから…、上記構成を実現するように被告表示器Aが機能し得るのは、被告製品3のOSがインストールされた場合であり、かつ、その場合に限る。その上、被告表示器Aと被告製品3は、いずれも一審被告が生産、販売するものであり、一審被告は上記のような構成を熟知し、あえてこのような構成を選択し、かつ、顧客に両者を提供しているものといえる。

以上からすると、被告表示器Aと被告製品3とは、たまたま物理的に別個の製品とされたことにより、一つの機能が複数の部品に分属させられているものの、本来的には、被告表示器Aは、被告製品3と機能的一体不可分の関係にあるものであって、独立した製品とされていたとしても、本件発明1の特徴的技術手段を直接もたらす特徴的部品等を構成するものであるというべきである。したがって、被告表示器Aは本件発明1の課題解決不可欠品である。』

 

(2)直接侵害の割合と間接侵害(特許法101条2号)の主観的要件

本判決は、以下のとおり判示して、例外的とはいえない範囲の者が特許権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識・認容していれば主観的要件を満たすとして、約4分の1の割合で特許法101条2号の間接侵害を認めた。

『…「発明の実施に用いられることを知りながら」(主観的要件②)…

被告表示器Aを購入等するユーザは必ず被告製品3を購入等すること、回路モニタ機能がプログラマブル表示器に本来的に要請される機能であること、一審被告がワンタッチ回路ジャンプ機能を宣伝広告のポイントとしていたこと、被告表示器A及び被告製品3を購入等したユーザは回路モニタ機能等を用いることを強く動機付けられ、その機能がインストールされる可能性もかなり高いといえること、そして、回路モニタ機能等を利用できる機器環境にあるユーザの割合がかなり高く見込まれることに鑑みると、被告表示器A又は被告製品3を購入等するユーザのうち例外的とはいえない範囲の者が本件特許権1の直接侵害品の生産をする高度の蓋然性があると推認され、これを覆すに足りる主張立証はないというべきである。

なお、被告表示器Aのうち被告製品1-2については、回路モニタ機能等を使用するユーザは必ずオプション機能ボードを購入する必要があり、他の被告表示器Aに比べ、回路モニタ機能等使用率が下がる可能性があるところ…、…被告製品1-2の販売数と、…オプション機能ボードの販売数を対比すると、被告製品1-2を購入等したユーザのうち回路モニタ機能等を利用できるユーザは最大でも(オプション機能ボードを購入したユーザが必ず回路モニタ機能等を使用するとはいえない。)約4分の1になるが、この割合は、被告製品1-2を購入したユーザのうち例外的とはいえない範囲の者が本件特許権1の直接侵害品の生産をする高度の蓋然性があると推認することを妨げるものではない。』

 

3.若干の考察

(1)間接侵害(特許法101条2号)の主観的要件(「発明の実施に用いられることを知りながら」)について

本判決は、「例外的とはいえない範囲の者が本件特許権1の直接侵害品の生産をする高度の蓋然性がある」場合には、「発明の実施に用いられることを知りながら」という、間接侵害(特許法101条2号)の主観的要件を満たすという規範を定立した。

この規範は、適法用途にも著作権侵害用途にも利用できるファイル共有ソフトWinnyをインターネットを通じて不特定多数の者に公開、提供し、正犯者がこれを利用して著作物の公衆送信権を侵害することを幇助したとして、著作権法違反幇助に問われた事案につき、Winny事件の最高裁判決(最判平成21年(あ)第1900号)が、「例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していた」と認められないことを理由として、被告人には著作権法違反罪の幇助犯の故意が欠けるとして無罪判決をした際の規範と同じである。(著作権法違反罪の幇助犯は故意が必要であり、特許権侵害は推定される過失で足りるという相違点は、特許法101条2号では悪意が必要であるから、同規範には反映されていない。)

それでは、「例外的とはいえない範囲の者」とは、何パーセントを目安にできるのか?

この点については、大阪地判平成27年(ワ)第8974号【…異常発生時にラダー回路を表示する装置事件】の控訴審・知財高判平成31年(ネ)第10007号(本判決)は、「約4分の1」のユーザが利用することは間接侵害成立を妨げないと判断した。

また、本判決の規範を用いたものではないが、下掲のとおり、東京地判平成20年(ワ)第19874号【医療用器具事件】は、全症例のうち「約27%」の症例において採用された事案において間接侵害成立とした。大阪地判平成30年(ワ)第4851号【クランプ装置事件】も、25%以上であったことが推察される。

以上の各裁判例を考慮すると、一つの目安として、対象製品のうち「約25%」以上が直接侵害品の生産(間接侵害)に用いられることを認識・認容していた場合には間接侵害が成立する可能性がある。(もちろん、これよりも低い割合でも用途発明侵害、間接侵害が認容される可能性は否定できない。また、各判決も直接侵害に使われる割合のみで結論を出したわけではないが、この数字はあくまで一つの目安として実務上参考になる。)

 

(2)用途発明の主観的要件と当該用途の使用割合

講学上の「用途発明」の充足性は「その用途に使用されるものとして販売されていること」であり(平成17年(ネ)第10125号【シロスタゾール事件】等)という規範で判断され、典型的にはラベルを貼って(医薬品であれば添付文書に記載して)販売等することであるが、【シロスタゾール事件】が「再狭窄予防効果等があることをその特性として積極的に位置付けた販売活動を行っていた」場合に充足とした(職務発明の対価請求の対象とした)ことは、他の裁判例でも、学説上も争いはないところである。したがって、ラベル表示又は積極的なプロモーションは、用途発明の用途を充足する。

さらなる検討課題として、ラベル表示もプロモーションも行っていないが、事実として、イ号製品等が特許発明の用途に相当割合で用いられる蓋然性があることを認識していた場合に用途発明の侵害となるかが論点である。この論点については、世界的に裁判所の判決が無いため確定的な考察はできないが、同一の物がどのように使われるかにより特許権侵害となったりならなかったりするという意味では、特許法101条2号の間接侵害と用途発明とは通ずるものがあるため、特許法101条2号の間接侵害の主観的要件に関する3つの裁判例は用途発明についても参考になるかもしれない。

 

(3)特許法101条2号の間接侵害と用途発明の差止めが認められる範囲

用途発明について東京地判平成2年(ワ)第12094号【アレルギー性喘息の予防剤事件】、間接侵害について大阪地判平成27年(ワ)第8974号【…異常発生時にラダー回路を表示する装置事件】、同控訴審・知財高判平成31年(ネ)第10007号(本判決)、大阪地判平成30年(ワ)第4851号【クランプ装置事件】が「全部差し止めても、過剰差止めではない」としているから、主文で差止めが認められる対象範囲は広範に亘る。

ただし、損害賠償額は、当該用途に用いられる割合で按分されるという考え方は、上掲裁判例全般を通じて認められる。(詳細は、下掲・各裁判例紹介参照。)

 

 

【関連裁判例の紹介】

1.間接侵害(特許法101条2号)の主観的要件(各判決は直接侵害に使われる割合のみで結論を出したわけではないが、この数字はあくまで一つの目安として実務上参考になる。)

(1)東京地判平成20年(ワ)第19874号【医療用器具事件】は、「調査嘱託の結果においては,被告製品の使用経験があるとし,かつ,被告製品を用いた穿刺の方法を回答した58の医療機関のうち,一体化同時穿刺のみを採用している医療機関は,約26%(15/58)であり,それ以外の方法も併せて採用している医療機関も含めると,約45%((15+11)/58)の医療機関が一体化同時穿刺を採用した実績があること,また,上記58の医療機関における被告製品の使用症例を横断的にみると,合計2869の症例の約27%に当たる785の症例において,一体化同時穿刺が採用されていることが示されているものといえる。そして,このような本件調査嘱託の結果からすれば,一体化同時穿刺という被告製品の使用態様が,特異なものではなく,医師らによって通常行われ得る被告製品の使用態様の一つであるものと認めることができる。」と判示しており、同判決を一つの目安とするならば、全症例のうち「約27%」の症例において採用された事案において間接侵害成立とした。

 

(2)大阪地判平成27年(ワ)第8974号【…異常発生時にラダー回路を表示する装置事件】の控訴審・知財高判平成31年(ネ)第10007号(本判決)は、「被告表示器Aのうち被告製品1-2については、回路モニタ機能等を使用するユーザは必ずオプション機能ボードを購入する必要があり、他の被告表示器Aに比べ、回路モニタ機能等使用率が下がる可能性があるところ…、…被告製品1-2の販売数と、…オプション機能ボードの販売数を対比すると、被告製品1-2を購入等したユーザのうち回路モニタ機能等を利用できるユーザは最大でも(オプション機能ボードを購入したユーザが必ず回路モニタ機能等を使用するとはいえない。)約4分の1になるが、この割合は、被告製品1-2を購入したユーザのうち例外的とはいえない範囲の者が本件特許権1の直接侵害品の生産をする高度の蓋然性があると推認することを妨げるものではない。」と判示して、「約4分の1」のユーザが利用することは間接侵害成立を妨げないと判断した。

 

(3)大阪地判平成30年(ワ)第4851号【クランプ装置事件】は、「購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在する」ことを認定する文脈において、損害論部分を引用して「被告製品群7及び8に属する製品がスイングクランプと組み合わせて販売される割合が大きい」と判示しているが、具体的な数値は「●●●●」で黒塗りされており不明である。もっとも、その他の文脈から、25%以上であったことが推察される。

 

2.用途発明の差止め範囲

東京地判平成2年(ワ)第12094号【アレルギー性喘息の予防剤事件】は、「本件化合物については、これを製剤販売する業者としては、アレルギー性喘息の予防剤としての用途と他用途とを用途としての適用範囲において実質的に区別することが可能なのであって、右区別をすることによって当該製剤が本件発明の技術的範囲に属していないことを明らかにすることができるのであり、他方、右用途の区別が明確になされていない場合には、本件化合物はアレルギー性喘息の予防剤としての用途と他用途とがいわば不可分一体になっているものというほかはなく、したがって、アレルギー性喘息の予防剤としての用途と他用途とを区別する方途がないのであるから、当該製剤販売業者としては、本件化合物のアレルギー性喘息の予防剤としての用途のみならず、他用途にまで本件発明の技術的範囲が及ぶことも甘受せざるを得ないものといわなければならない。本件においては、仮に被告らの製剤品にアレルギー性喘息の予防剤以外の用途があるとしても、被告らは、被告らの製剤品について、アレルギー性喘息の予防剤としての用途を除外する等しておらず、右予防剤としての用途と他用途とを明確に区別して製剤販売していないのであるから、被告らが、その製剤品についてアレルギー性喘息の予防剤以外の用途をも差し止められる結果となったとしてもやむを得ないものといわざるをえない。」と判示して、イ号製品のうち「アレルギー性喘息の予防剤」のみならず「アレルギー性喘息の治療剤」として使われる分を区別せずに差止請求を認容した。

ただし、特許権者が請求したイ号製品の物質自体の差止請求は認められず、一部認容として、主文は「…フマル酸ケトチフェンを有効成分とし、『効能又は効果』として気管支喘息、喘息又はアレルギー性喘息を含み、『用法』として『一日二回、朝食後および就寝前に経口投与する』等と定期的続継的に用いるものとする医薬品(なお、…商品名が『…』のもの)」の差止請求を認めたに留まった。

同判決に拠れば、差止めの範囲は、物質自体ではないが、イ号製品のうち、特許発明の用途を含むラベル(添付文書)が付されたものすべてが対象であり、その中に特許発明の用途以外に用いられるものが混在していたとしても、区別できない以上差止め対象となる。

なお、「添付文書から…という適応の記載を削除せよ」という主文が認められるかという論点は、過去にそのような判決は無いが、特許権者がそのように請求すれば法律上は有り得る。さらに進んで、全部差止請求しているときに、裁判所が一部認容としてそのような主文で判決できるかについては、三村量一元判事がその可能性を示唆しているが(「用途発明と差止判決」(パテント別冊No.22、2019年、Vol.72))、学説上の多数説ではなく、裁判例が待たれる。

 

3.用途発明の損害賠償範囲

差止めの範囲と異なり、特許発明の用途に用いられる製品とそれ以外の用途に用いられる製品とが存在することを考慮して、減額されると考える。

例えば、東京地判平成15年(ワ)第3552号【水晶振動子事件】<髙部>は、「アース用外部端子」という特許発明について、効果を有しその目的で使用できる構成を有していれば、被告製品をその目的で販売していなくても侵害としたが、損害論では、「被告製品は,…実装時にアースとして使用することが可能な構成を有しているが,その外部端子をアース用としては販売したり使用したりしていないものがある。そうすると,被告製品が本件特許権を侵害しており,不当利得返還請求は認められるものの,その実施料相当額は,上記事由も斟酌して決定するのが相当である。」と判示して、アース用でない製品があるという事情を参酌して実施料率を低く認定した。

以 上

 

 

(控訴人兼被控訴人・原告/特許権者):株式会社ジェイテクト
(控訴人兼被控訴人・被告):三菱電機株式会社

 

 

執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュース令和5年8月21日の原稿を追記・修正したものです。)

監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

 

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