<特許法102条1項の条文>「特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。」
<判決要旨>
(1)「侵害行為がなければ販売することができた物」とは,侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者の製品,すなわち,侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者の製品であれば足りる。
(2)「単位数量当たりの利益の額」は,特許権者の製品の売上高から,特許権者において上記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にある。
(3)特許発明を実施した特許権者の製品において,特許発明の特徴部分がその一部分にすぎないとしても,特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定される。もっとも、特許製品において大きな顧客誘引力を有する部分は,ローリング部の構成であって,特許発明の特徴部分が特許権者の製品の販売による利益の全てに貢献しているとはいえないなどの本件事情の下では,特徴部分の特許権者の製品における位置付け,特許権者の製品が特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力などの事情を総合考慮すると,事実上の推定が約6割覆滅され,これを限界利益から控除すべきであるとされた。
(4)「実施の能力」は,潜在的な能力で足り,生産委託等の方法により,侵害品の販売数量に対応する数量の製品を供給することが可能な場合は実施の能力があるというべきであり,その主張立証責任は特許権者側にある。
(5)ただし書所定の「特許権者が販売することができないとする事情」は,侵害行為と特許権者の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい,例えば,①特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性),②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),④侵害品及び特許権者の製品の性能(機能,デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在することなどの事情がこれに該当し,上記の事情及び同事情に相当する数量の主張立証責任は,侵害者側にある。
(1)特許法102条2項について
<特許法102条2項の条文>「特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。」
<判決要旨>限界利益を算定するために控除できる経費を「侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費」のみとし、「利益全額について同項による推定が及ぶ」と解し、推定覆滅事由である「侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情」としては、例えば、「①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)、②市場における競合品の存在、③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、④侵害品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情」、及び、「特許発明が侵害品の部分のみに実施されている場合」を例示した。
(2)特許法102条3項について
<特許法102条3項の条文>「特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」
<判決要旨>令和元年新法特許法102条4項を先取りして、「特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、実施に対し受けるべき料率は、むしろ、通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。」と判示し、料率を定める具体的方針として、「①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべき」とした。
最終的には、控訴人キアラマキアート以外は、特許法102条2項に基づいて算定した損害額が、特許法102条3項に基づいて算定した損害額を上回ったため、特許法102条2項に基づいて算定した損害額が認容された。控訴人キアラマキアートについては、特許法102条3項に基づいて算定した損害額が、特許法102条2項に基づいて算定した損害額を上回ったため、特許法102条3項に基づいて算定した損害額が認容された。この判決は、大合議判決として特許法102条2項及び3項について判示した知財高裁の意見表明であるから、今後の実務上極めて重要な意義を有すると思われる。
(1)「全体利益・非寄与度立証責任配分説」を採用したこと
両大合議判決ともに、いわゆる「全体利益・非寄与度立証責任配分説」を採ったものである。すなわち、「二酸化炭素含有粘性組成物」大合議判決は特許法102条2項について「利益全額について同項による推定が及ぶ」と解し、「美容器」大合議判決は特許法102条1項について「特許発明を実施した特許権者の製品において,特許発明の特徴部分がその一部分にすぎないとしても,特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定される」と解した上で、この推定を覆滅する立証責任を被疑侵害者に課したものである。その意味で、特許法102条1項・2項において事実上推定される「(限界)利益」全額から控除される際の考慮要素の位置付けは、特許権者が立証すべき「寄与度」ではなく、被疑侵害者側が立証すべき「非寄与度」である。
(2)2段階の損害額減殺
また、両大合議判決ともに、Ⓐ「非寄与度」とⒷその他の事情を考慮要素として2段階で損害額を減らすことができる枠組みであるという点でも、同様である。
すなわち、「美容器」大合議判決は、特許法102条1項について、Ⓐ「限界利益」が6割控除されるとともに、Ⓑただし書所定の「特許権者が販売することができないとする事情」により更に5割控除したものであるから、「譲渡数量」×「単位数量当たりの利益の額」×0.6×0.5というダブル割り算になっている。
同様に、「二酸化炭素含有粘性組成物」大合議判決も、「侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情」としては、例えば、Ⓑ「①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)、②市場における競合品の存在、③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、④侵害品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)などの事情」、及び、Ⓐ「特許発明が侵害品の部分のみに実施されている場合」を例示しており、Ⓐ及びⒷの各考慮要素によるダブル割り算が予定されているものと思われる。(結論としては、2項の推定を覆滅することは認められなかった。)
更に言えば、両大合議判決がⒷの考慮要素として挙げた①②③④は殆ど同一である。
(1) 特許法102条1項について
特許法102条1項は,民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり,特許法102条1項本文において,侵害者の譲渡した物の数量に特許権者又は専用実施権者(以下「特許権者等」という。)がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を,特許権者等の実施の能力の限度で損害額とし,同項ただし書において,譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事情を侵害者が立証したときは,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものと規定して,侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより,より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である。
特許法102条1項の文言及び上記趣旨に照らせば,特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは,侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品,すなわち,侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者等の製品であれば足りると解すべきである。
また,「単位数量当たりの利益の額」は,特許権者等の製品の売上高から特許権者等において上記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した額(限界利益の額)であり,その主張立証責任は,特許権者等の実施の能力を含め特許権者側にあるものと解すべきである。
さらに,特許法102条1項ただし書の規定する譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が「販売することができないとする事情」については,侵害者が主張立証責任を負い,このような事情の存在が主張立証されたときに,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものである。
(2) 侵害の行為を組成した物の譲渡数量
…被告は総計35万1724個,月平均2万0690個程度の被告製品を譲渡したことになる(争いがない。)。…
(3) 侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額
…ウ 原告製品の限界利益の額
…本件発明2は,回転体,支持軸,軸受け部材,ハンドル等の部材から構成される美容器の発明であるが,軸受け部材と回転体の内周面の形状に特徴のある発明であると認められる(以下,この部分を「本件特徴部分」という。)。
原告製品は,…支持軸に回転可能に支持された一対のローリング部を肌に押し付けて回転させることにより,肌を摘み上げ,肌に対して美容的作用を付与しようとする美容器であるから,本件特徴部分は,原告製品の一部分であるにすぎない。
ところで,本件のように,特許発明を実施した特許権者の製品において,特許発明の特徴部分がその一部分にすぎない場合であっても,特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定されるというべきである。
そして,原告製品にとっては,ローリング部の良好な回転を実現することも重要であり,そのために必要な部材である本件特徴部分すなわち軸受け部材と回転体の内周面の形状も,原告製品の販売による利益に相応に貢献しているものといえる。しかし,上記のとおり,原告製品は,一対のローリング部を皮膚に押し付けて回転させることにより,皮膚を摘み上げて美容的作用を付与するという美容器であるから,原告製品のうち大きな顧客誘引力を有する部分は,ローリング部の構成であるものと認められ,また,前記アのとおり,原告製品は,ソーラーパネルを備え,微弱電流を発生させており,これにより,顧客誘引力を高めているものと認められる。これらの事情からすると,本件特徴部分が原告製品の販売による利益の全てに貢献しているとはいえないから,原告製品の販売によって得られる限界利益の全額を原告の逸失利益と認めるのは相当でなく,したがって,原告製品においては,上記の事実上の推定が一部覆滅されるというべきである。
そして,上記で判示した本件特徴部分の原告製品における位置付け,原告製品が本件特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力など本件に現れた事情を総合考慮すると,同覆滅がされる程度は,全体の約6割であると認めるのが相当である。
この点に関し,一審被告は,原告製品全体の製造費用に占める軸受けの製造費用の割合を貢献の程度とすべき旨主張するが,上記の推定覆滅は,原告製品の販売による利益に対する本件特徴部分の貢献の程度に着目してされるものであり,当該部分の製造費用の割合のみによってされるべきものではない。また,一審被告は,原告製品においては,ローラの抜落の防止機能が不十分であるから,軸受けの貢献度は低い旨主張するが,一審被告が根拠とする乙138(原告製品に関するブログの記載)から,原告製品においてローラの抜落の防止機能が不十分であると認めることはできず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。よって,上記主張はいずれも採用できない。
以上より,原告製品の「単位数量当たりの利益の額」の算定に当たっては,原告製品全体の限界利益の額である5546円から,その約6割を控除するのが相当であり,原告製品の単位数量当たりの利益の額は,2218円(5546円×0.4≒2218円)となる。
(4)実施の能力に応じた額
特許法102条1項は,…侵害者の譲渡数量に特許権者等の製品の単位数量当たりの利益の額を乗じた額の全額を特許権者等の受けた損害の額とするのではなく,特許権者等の実施の能力に応じた額を超えない限度という制約を設けているところ,この「実施の能力」は,潜在的な能力で足り,生産委託等の方法により,侵害品の販売数量に対応する数量の製品を供給することが可能な場合も実施の能力があるものと解すべきであり,その主張立証責任は特許権者側にある。そして,…一審原告は,毎月の平均販売個数に対し,約3万個の余剰製品供給能力を有していたと推認できるのであるから,この余剰能力の範囲内で月に平均2万個程度の数量の原告製品を追加して販売する能力を有していたと認めるのが相当である。
したがって,一審原告は,一審被告が本件侵害期間中に販売した被告製品の数量の原告製品を販売する能力を有していたと認められる。
(5)一審原告が販売することができないとする事情
…「販売することができないとする事情」は,侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい,例えば,①特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性),②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),④侵害品及び特許権者の製品の性能(機能,デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在することなどの事情がこれに該当するというべきである。…
以下,一審被告が販売できない事情として主張する事情について検討する。
(ア) 一審被告は,原告製品と被告製品の価格の差異や販売店舗の差異を,販売できない事情として主張する。
a 本件においては,前記(2)ウ,(3)アのとおり,原告製品は,大手通販業者や百貨店において,2万3800円又はこれに近い価格で販売されているのに対し,被告製品はディスカウントストアや雑貨店において,3000円ないし5000円程度の価格で販売されているが,このように,原告製品は,比較的高額な美容器であるのに対し,被告製品は,原告製品の価格の8分の1ないし5分の1程度の廉価で販売されていることからすると,被告製品を購入した者は,被告製品が存在しなかった場合には,原告製品を購入するとは必ずしもいえないというべきである。したがって,上記の販売価格の差異は,販売できない事情と認めることができる。
そして,原告製品及び被告製品の上記の価格差は小さいとはいえないことからすると,同事情の存在による販売できない事情に相当する数量は小さくはないものと認められる。
一方で,上記両製品は美容器であるところ,美容器という商品の性質からすると,その需要者の中には,価格を重視せず,安価な商品がある場合は同商品を購入するが,安価な商品がない場合は,高価な商品を購入するという者も少なからず存在するものと推認できるというべきである。また,…原告製品は,ローラの表面にプラチナムコートが施され,ソーラーパネルが搭載されて,微弱電流を発生させるものであるから,これらの装備のない被告製品に比べてその品質は高いということができ,したがって,原告製品は,その販売価格が約2万4000円であるとしても,3000円ないし5000円程度の販売価格の被告製品の需要者の一定数を取り込むことは可能であるというべきである。以上からすると,原告製品及び被告製品の上記価格差の存在による販売できない事情に相当する数量がかなりの数量になるとは認められない。
b このように,原告製品と被告製品との価格の差異は,需要者の購入動機に影響を与えているといえるが,大手通販業者や百貨店において商品を購入する者がディスカウントストアや雑貨店において商品を購入しないというような経験則があるとは認め難いから,価格の差を離れて,原告製品と被告製品の上記販売態様の差異が,需要者の購入動機に影響を与えているとは認められず,販売態様の差異は,販売できない事情として認めることはできないというべきである。
(イ) 一審被告は,競合品が多数存在することを,販売できない事情として主張する。
平成31年4月の時点で,原告製品と被告製品の同種の製品として,少なくとも29種類の製品が販売されていることが認められる(乙176,弁論の全趣旨)が,本件証拠上,本件侵害期間(平成27年12月4日ないし平成29年5月8日)に,市場において,原告製品と競合関係に立つ製品が販売されていたと認めるに足りないから,この点を,販売できない事情と認めることはできない。
(ウ) 一審被告は,本件発明2は軸受けについての発明であるところ,被告製品における軸受けの製造費用は全体の製造費用の僅かな部分を占めるにすぎず,軸受けは付属品に類するものであることを販売できない事情として主張する。
しかし,本件発明2が美容器の一部に特徴のある発明であるという事情は,既に原告製品の単位数量当たりの利益の額の算定に当たって考慮しているのであるから,重ねて,これを販売できない事情として考慮する必要はないというべきである。
(エ) 一審被告は,軸受けの部分は外見上認識することができず,代替技術が存することなどを販売できない事情として主張する。
しかし,一審被告の主張する上記の事情は,被告製品及び原告製品のいずれにも当てはまるものであるから,同事情の存在によって,被告製品がなかった場合に,被告製品に対する需要が原告製品に向かわなくなるということはできず,したがって,これらの事情を販売できない事情と認めることはできない。
(オ) 一審被告は,原告製品は,微弱電流を発生する機構を有しているが,被告製品はそのような機構を有していないことを販売できない事情として主張する。
確かに,…原告製品は,微弱電流を発生する機構を有しており,一方で,被告製品はそのような機構を有していないが,このことは,被告製品は,原告製品に比べ顧客誘引力が劣ることを意味するから,被告製品が存在しなかった場合に,その需要が原告製品に向かうことを妨げる事情とはいい難い。したがって,上記の点は,販売できない事情と認めることはできない。
(カ) 一審被告は,一審被告の営業努力を,販売できない事情として主張するが,本件証拠上,一審被告に,販売できない事情と認めるに足りる程度の営業努力があったとは認められない。
ウ 以上によれば,本件においては,…判示した事情を考慮すると,この販売できない事情に相当する数量は,全体の約5割であると認めるのが相当である。
(6) 本件発明2の寄与度を考慮した損害額の減額の可否について
前記(3)及び(5)のとおり,原告製品の単位数量当たりの利益の額の算定に当たっては,本件発明2が原告製品の販売による利益に貢献している程度を考慮して,原告製品の限界利益の全額から6割を控除し,また,被告製品の販売数量に上記の原告製品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た一審原告の受けた損害額から,特許法102条1項ただし書により5割を控除するのが相当である。仮に,一審被告の主張が,これらの控除とは別に,本件発明2が被告製品の販売に寄与した割合を考慮して損害額を減額すべきであるとの趣旨であるとしても,これを認める規定はなく,また,これを認める根拠はないから,そのような寄与度の考慮による減額を認めることはできない。
(7)損害額の算定
以上からすると,特許法102条1項による一審原告の損害額は,被告製品の譲渡数量35万1724個のうち,約5割については販売することができないとする事情があるからその分を控除し,控除後の販売数量を原告製品の単位数量当たりの利益額2218円に乗じることで,3億9006万円(2218円×35万1724個×0.5≒3億9006万円)となる。
また,一審被告による本件特許権2の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,認容額,本件訴訟の難易度及び一審原告の差止請求が認容されていることを考慮して,5000万円と認めるのが相当である。
したがって,一審原告の損害額は,合計で4億4006万円となる。
(原告:被控訴人)株式会社MTG
(被告:控訴人)株式会社ファイブスター
(Keywords)特許、損害論、大合議、MTG、ファイブスター、美容器、二酸化炭素含有粘性組成物、寄与率、寄与度、非寄与度、業務態様、市場の非同一性、競合品、営業努力、ブランド力、宣伝広告、性能、機能、デザイン、特許発明以外の特徴
執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュース令和2年5月1日の原稿を追記・修正したものです。)
監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)
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