<判決要旨>
本件は,登録商標「EIGOTOWN」(登録第4420958号。以下,「本件商標」という。)について,不使用を理由として商標登録の取消しを求める審判請求(商標法50条)につき,商標権者等による使用の事実が認められないとしてその商標登録を取り消した審決に対する取消訴訟である。
本件商標の商標権者であるX(イングリッシュタウン・インコーポレイテッド)は,1997年に設立され,米国を本拠として,オンライン英語学習サービスを国際的に展開する世界最大の英会話スクールであり,我が国においては,ソフトバンク・グループとの共同出資によりイングリッシュタウン株式会社を2000年5月に設立し,インターネットを利用した総合英語学習サービス等を展開している。Y(エイゴタウン・ドット・コム株式会社)も,また,我が国において英会話スクール等の英語学習サービスを提供している会社である。
Yは,特許庁に対して,本件商標につき商標登録の取消しを求める審判請求(商標法50条)をしたところ,Xは,本件商標をXの開設するウェブサイト(
http://www.englishtown.co.jp)において使用したと主張した。すなわち,当該ウェブサイトのトップページ(以下「Xトップページ」という。)には,青色の吹出し形状の図形上においてポップアップ機能により「Englishtown.com」の表示と「Eigotown.com」の表示とが,数秒間隔で交互に切り替わる画像(以下,「本件吹出し切替画像」という。)を掲示してこれを使用していたと主張し,これをウェブサイトに掲示した際のコンピュータ画面上の表示の記録などを証拠として提出した。
しかし,審決は,「登録商標の使用の事実の証明は客観的に認め得る資料によってなされるべきであるところ,一般的,コンピューターの画面上に表されている作成日やアドレス,ファイル名等は,これを書き換えたり,あるいは画面(コンテンツ)自体を差し替えることも容易なことである」などとして,XがXトップページ上で本件商標を使用した事実は認められないとして,本件商標の商標登録を取り消すべきものとした。
これに対して,Xが審決の取消訴訟を提起したのが,本件訴訟である。
本判決は,本件訴訟においてXの提出した電子メールのやりとりの記録については,「電子メールについては,その作成日は,作成者が使用するコンピュータで設定した日時に依存して記録されるものであって,容易に真実と異なる日時を表示することができるし,また,受信した電子メールの内容をその後に容易に訂正することもできる。
しかるに,関係者間で送受信された電子メールのファイルを保存したものとしてXが提出したCDロムに記録されたファイルの内容を検討すると,これらのファイルには,電子メールファイルに受信日時の記録がなく,送信日時と添付ファイルの変更日時・作成日時が矛盾しているなどの点が認められる」旨を判示し,また,ウェイバックマシンにおけるXトップページ上での本件吹出し切替画像の保存データについても,「ウェイバック・マシンについては,利用規約に記録内容の正確性について保証しないことが記載されている上,現に,ウェイバック・マシンに記録されている日経新聞のウェブサイトの内容について,真実と異なる内容が表示されている例が存在することに照らせば,X提出の書証をもって,直ちにXトップページにおいてX主張の日に本件吹出し切替画像が閲覧可能な状態となっていたことを認めることはできない」旨を判示して,これらによっては,X主張の日にXトップページ上で本件商標が掲示されていたとは認められないとした。そして,本件商標の商標登録を取り消すべきものとした審決の判断に誤りはないとして,Xの請求を棄却した。