【商標】令和4年(行ケ)10073<菅野>『zhiyun』事件
4条1項7号違反(公序良俗違反)
「先願主義に名を借りて…出所識別機能とは関係なく、剽窃的な商標出願を大量にした上、金銭的利益を得る…事案であって、単なる特定の当事者間の私的な問題に止まるものではなく、公正な取引秩序そのものに関わる重大な違反がある」
(判旨抜粋)
本件商標の登録出願日である平成30年9月24日以前に、被告は、引用商標ないしそれに類似する商標を付したスタビライザー等の商品について、海外において相当な売上げを得ており、我
が国においても、遅くとも平成28年7月13日以降、引用商標ないしそれに類似する商標を付したジンバル雲台やスタビライザーがAmazonジャパンで販売され、平成29年には見本市に参加し、平成30年には日本市場に本格参入している。
また、同ウによれば、本件商標の登録出願は、平成29年9月25日から令和3年5月11日までの間に原告によりされた大量の商標登録出願の一部であるところ、これらの出願のうち22件については、登録後1、2年で移転され、そのうち少なくとも18件については原告による登録出願が、類似する他人の商標の使用に後れるものであり、原告出願に係るこれらの商標の多くが特徴的な造語で、先行する他人の商標と偶然に一致したものとは考えられず、また、原告は本件商標についても使用料を得ようとしていたことが認められる。
これらの事情によれば、原告は、先願主義に名を借りて、先行して使用されてきた他人の商標と類似する商標を出願した上、金銭的利益を得ることを業とする者と認めざるを得ない。また、本件商標についても、日本語とも英語とも考えられない造語であり、およそ原告が独自に考え出したものとは認められないもので、原告は、被告が海外において、引用商標を付したスタビライザーやジンバル雲台で相当の販売実績を有していることを知りながら、これらの商品と同じ商品を指定商品として、我が国で先に商標登録を得ることで、金銭的利益を得ようとしていたものと推認し得るものである。このような本件商標の登録出願に至る経緯等に照らせば、登録を認めることは、商標法の予定する公正な取引秩序に著しく反するものというべきであるから、本件商標の商標登録は、公序良俗に反するものというほかない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/769/091769_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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