◆判決本文
1.原告表示に係る被控訴人(原告)の著名な商品等表示該当性について
原告表示は、怪獣「ゴジラ」や「ゴジラ」シリーズの映画自体を意味するだけでなく、その製作主体である被控訴人(原告)という出所を表示する商品等表示として機能しており、被控訴人(原告)の著名な商品等表示として使用されている。
2.不正競争防止法2条1項2号所定の原・被告表示の類否の判断基準について
不正競争防止法2条1項2号所定の原・被告表示の類否は、基本的に同項1号に係る判例と同様に、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両表示を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断すべきであるものの、同項2号にあっては、特に、容易に著名な商品等表示を想起させるほど類似しているような表示か否かを検討すべきである。
3.原告表示と被告表示1の類否判断について
原告表示が被控訴人(原告)の商品等表示として著名であること、控訴人(被告)らが一般消費者をも需要者として宣伝広告のために被告表示を商品等表示として使用していたこと、同宣伝広告において怪獣や特撮映画との関連が訴求されたこと等からすれば、被告表示1は、容易に著名な被控訴人(原告)の商品等表示を想起させるほど類似しているような表示であって、原告表示の顧客吸引力を利用し、原告表示の稀釈化を生じさせ得るもので、控訴人(被告)らは、原告の営業上の利益を侵害したものである。
1.判決要旨1は、元々は映画に登場する怪獣「ゴジラ」の名称や同「ゴジラ」が登場する怪獣映画シリーズの同名称に由来する題号であった原告表示が、その使用(許諾)の結果、同映画の製作者の商品等表示として著名になったことを肯認したものである。
2.判決要旨2は、不正競争防止法2条1項2号所定の原・被告表示の類否の判断基準について、基本的に周知な原告の商品等表示を混同のおそれから保護する同項1号に係る判例(最判昭和58年10月7日民集37巻8号1082頁〔マンパワー事件〕)による原・被告表示の類否の判断基準と同様としつつも、著名な原告の商品等表示を希釈化から保護する同項2号の独自の趣旨に鑑み、同項1号においては、混同が発生する可能性があるのか否かが重視されるべきであるのに対し、同項2号にあっては、容易に著名な商品等表示を想起させるほど類似しているような表示か否かを検討すべきとしたものであり、先例(東京地判平成20年12月26日判時2032号11頁〔黒烏龍茶事件〕)に沿ったものである。
3.判決要旨3は、判決要旨2の判断基準を原・被告表示の類否判断にあてはめて類似性を肯定するとともに、差止請求及び損害賠償請求の要件事実とされる不正競争防止法3条及び4条所定の原告の営業上の利益の侵害も、原告表示の顧客吸引力の無断利用さらには著名な原告の商品等表示の希釈化により、肯定したものである。
1.原告表示に係る原告(被控訴人)の著名な商品等表示該当性について
「原告表示は、平成6年9月より前に、怪獣『ゴジラ』や『ゴジラ』シリーズの映画自体を意味するだけでなく、その製作主体である被控訴人という出所を表示する商品等表示として機能するようになり、その後も現在に至るまで、同様の機能を有する商品等表示であると認められる。
以上によれば、原告表示は、平成6年9月より前から現在に至るまで、原告の著名な商品等表示として使用されていると認められる。」
2.不正競争防止法2条1項2号所定の原・被告表示の類否の判断基準について
「ある商品等表示が不正競争防止法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似するか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両表示を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である(最高裁昭和57年(オ)第658号同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082頁参照)。また、不正競争防止法2条1項2号における類似性の判断基準も、同項1号におけるそれと基本的には同様であるが、同項2号にあっては、著名な商品等表示とそれを有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し、稀釈化を引き起こすような程度に類似しているような表示か否か、すなわち、容易に著名な商品等表示を想起させるほど類似しているような表示か否かを検討すべきものと解するのが相当である。」
3.原・被告表示の類否判断について
「原告表示が、怪獣『ゴジラ』が登場する『ゴジラ』シリーズの怪獣映画、特撮映画を公開するなどする原告の商品等表示として著名であること(前記3)、被告らが、被告ら及びその関連会社の宣伝広告のため一般消費者をも需要者として被告行為1を行っていたこと(前記⑶ウ)、被告タグチ工業が、『スーパーガジラ』及び被告表示2をその名称とする被告キャラクターを製造して『怪獣のガジラ』などとして展示したり、インターネット上に開設したウェブページにおいて特撮映画を連想させるような広告用動画を掲載したりしていたこと(前記2⑸、⑹)等からすれば、被告行為1は、容易に著名な商品等表示を想起させるほど類似しているような表示であって、原告表示の有する顧客吸引力を利用し、原告表示の稀釈化を生じさせ得るもので、被告らは、原告の営業上の利益を侵害したものと認められる。」
【Keywords】表示の類否の判断基準、希釈化、東宝、「ゴジラ」、「GODZILLA」、「ガジラ」、「GUZZILLA」、タグチ工業
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。
文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)
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