平成27年(行ケ)10190【油または脂肪中の環境汚染物質の低減方法】<鶴岡>
*引用発明の工程のうち一部を周知技術に置換すると、引用発明の3つの課題の内、2つを解決できない。
⇒阻害事由あり!!
★特許権者としては、主引例が複数の課題を解決すると主張することが得策!!
(判旨抜粋)
甲1…発明は…エ①及び③の課題の解決のためには,「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成」し,その上で分子蒸留を行うことにより,所望でない飽和および単不飽和脂肪酸を実質的に有しないグリセリドの残余画分を得ることが不可欠であり,この工程を,「揮発性作業流体を油組成物に外部から添加」した上で分子蒸留を行う工程に置換したのでは,…エ②の課題は解決できたとしても,…エ①及び③の課題の解決はできないことになる。してみると,甲1…発明において,「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成する」構成に代えて,周知技術である「揮発性作業流体を油組成物に外部から添加する」構成を採用することは,当該発明の課題解決に不可欠な構成を,あえて 当該課題を解決できない他の構成に置換することを意味するものであって,当業者がそのような置換を行うべき動機付けはなく,かえって阻害要因がある…。…
甲1…発明は…任意的,付加的な工程がない場合においても,上記エ①ないし③の課題を解決するものであることを前提としているというべきであり,そのためには,「リパーゼを用いた選択的エステル交換を行って脂肪酸エステルを含む油組成物を生成する」構成が不可欠なものである…。…後続工程の存在を考慮しても,上記…の判断が左右されるものではな…い。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/533/086533_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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