平成15年(行ケ)104【タキキニン拮抗体の医学的新規用途】
*実施例以外の物の作用効果を確認できる記載が必要として、医薬用途発明の進歩性〇。
(判旨抜粋)
本件明細書の発明の詳細な説明において,N K 1受容体拮抗活性と嘔吐治療活性との双方が確認されているのは,上記①の(±)シス-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジンのうち,(2 S,3 S)鏡像異性体についてのみであると認められる。そうすると,明細書の発明の詳細な説明に,構造類似性のない相当多種類のN K 1受容体拮抗作用を有する物質が嘔吐治療に有効であることを確認できる記載があるなど,N K 1受容体拮抗活性と嘔吐治療活性との相関関係を当業者が客観的に把握できると認められる場合であれば別論,本件明細書の発明の詳細な説明においては,N K 1受容体拮抗体である(2 S,3 S)-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジンが嘔吐治療に利用できることは裏付けられているといえるものの,それ以外のN K 1受容体拮抗体については,そもそもN K 1受容体拮抗活性と嘔吐治療活性の相関関係を裏付ける記載がないのであるから,それらを有効成分とする嘔吐治療剤について,当業者が容易に実施可能な程度に発明の詳細な説明の記載がされているものとは認められない…。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/593/010593_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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