大阪地判令和4年(ワ)8985【交差連結具】<松川>
(原告:因幡電機産業 v. 被告:丸井産業)
明細書の記載や技術常識から、「第一保持部」と「第二保持部」を共有する構成も本件発明に含まれると判断した。
⇒充足
(判旨抜粋)
特許請求の範囲の請求項及び本件明細書の各記載からすると、「第一保持部」と「第二保持部」が部材を共有できないことを定める文言はなく、むしろ共有し得ることを前提とする記載(本件明細書【0057】)が存在するから、「第一保持部」と「第二保持部」について、両者が部材を共有してはならないとの限定がされているとはいえない。
また、「第一保持部」について、ベース板部と第一保持板部の包囲部との間に第一棒状体を挟んで、一個の締結部材でベース板部と保持板部を緊結することにより第一棒状体を保持するものでなければならないとの限定がされているとも認められない(本件明細書にそのような構成が好適な態様等として説明されていたとしても、本件発明がそれに限定されないことは、本件明細書の記載からも明らかである。)。
そうすると、本件発明における「第一保持部」は、構成要件BないしD記載の文言どおり、「第一棒状体を保持する」ものであり、「板状に形成されたベース板部を含み」、「第二保持部」と「相対変位可能に連結され」る構成を有する部位をいうと解すべきである。
また、「第二保持部」は、構成要件C及びF記載の文言どおり、「第一保持部に対して相対変位可能に連結され」、「第二棒状体のそれぞれの軸方向に沿って対応する第二棒状体を挟み込んで保持」し、一対の「第二保持部」の一方が(ベース板部の両側に設けられた)一対の取付基部の一方に、他方が取付基部の他方にそれぞれ連結される構成を有する部位をいうと解すべきであり、前示のとおり、「第一保持部」と「第二保持部」が部材を共有してはならないとの限定がされているとはいえないから、かかる構成を有する部位は、「第一保持部」と部材を共有するとしても「第二保持部」に該当するというべきである。
さらに、(第二保持部が)「第一保持部に対して相対変位可能に連結され」(構成要件C)は、本件明細書(【0050】)の記載をも参照すると、施工の途中段階において、「第一保持部」に対する「第二保持部」の相対変位に伴って、吊りボルト81(第一棒状体)とブレースボルト82(第二棒状体)との交差角度変更操作を容易に行うことができることを含むものと解されるところ、前示のとおり、「第一保持部」と「第二保持部」が部材を共有してはならないとの限定がされているとはいえないから、「第一保持部」に対する「第二保持部」の相対変位に伴って、第一棒状体と第二棒状体との交差角度変更操作を容易に行うことができる場合、連結される部材が第一保持部と第二保持部で共有されているとしても「相対変位可能に連結され」に該当するというべきである。
https://ipforce.jp/Hanketsu/jiken/no/14730
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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