【知財実務オンライン】「中国でも模倣品を最高裁で撃退できた! ~実際の発明者と勝訴のポイントを徹底解説~ 」(デンカ株式会社/伊藤康樹、菅原峻一 (弁理士))
中国最高人民法院で勝訴に至るまでの7年以上にわたる経験について、発明者と知財部課長が振り返り、実務的な教訓を解説した。
1.裁判
中国では、侵害訴訟で無効の抗弁を主張できない。(ドイツと同じ)
被告は、侵害訴訟を提起されると、特許庁に無効審判を請求するのが定石である。無効審判の決着がつくまで、民事の侵害訴訟は「中断」する。
中国では、裁判所に提出する証拠は、模倣品の入手、開封、輸送、分析といった全プロセスを公証人に立ち会わせる必要がある。
中国では、裁判所が指定する第三者機関が分析を行う「司法鑑定」が実施される。
デンカは、この司法鑑定に備え、事前に自社で信頼できる分析機関を選定し、発明者が技術指導まで行い、公証付きの正確な分析データを準備していた。
この事前準備が、後の司法鑑定の結果をデンカ側に有利に導く要因となった。
2. 無効審判
①デンカが、本件特許出願後に出願した別の特許、発明者の論文により、実施可能要件を攻撃された。
②特許の信頼性を高めるため、明細書に「(試薬の)〇〇社製、製品名〇〇」といった具体的なメーカー名や製品名を記載していた。これは模倣業者に「レシピ」を提供するようなものであった。
③PCT出願時に、発明者が「不完全だが、1成分でも分離可能」ということを示す実施例データを追加していたことが、有利に働いた。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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