<審判実務者研究会報告書2024>テーマ6(商標)
【結合商標の類否判断】
<既登録商標に別の文字等を追加した構成からなる商標について>
・既登録商標の部分が要部になるかは、既登録商標 の周知性や、意味、用法に関する取引の実情が影響すると考えられる。ただ、「既登録商標に、自他商品又は役務の識別力の有無(強弱)に差がない別の文字等を追加した構成からなる商標」という状況はそもそも あまり存在せず、実際には、品質等表示を付加した(したがって、識別力に差がある) 事例が多い。
・二つの構成部分のうち識別機能が相対的に強い方の 構成部分が要部として抽出され得る。
・本願商標「A+B」は、付加された文字「B」に強い識別力があったとしても、もとより既存の登録商標(引用商標)「A」にも識別力があるがゆえに登録されているのであるから、付加された部分「B」のみならず当該既存の登録商標に相当する部分「A」についても、 原則として、それぞれ分離抽出されて類否判断の対象となる。
・本願商標が「A」で引用商標が「A’+B」の場合、引用商標の出願人は「A’+B」の組み合わせにおいて識別力があると考えて出願したのであるから、「A」の登録を阻止する効力を原則として認めるべきではない。
・本願商標が「A+B」で引用商標が「A’」の場合、既存商標に要素を付け加えたというものであるため、類似性を認める方向で考えるべき場合が多い。
・既登録商標と、追加する文字等の識別力が共に弱い場合は、別の意味合いを持つ造語になることがあり、また一般的に取引者、需要者は全体を一体不可分のものとして認識、記憶される可能性があるから、周知・著名商標でない限りは非類似(※東京高判平成12年(行ケ)第301号「ロマンティック北街道」事件)は、いわゆるウィークマークを「自己の商標として選択した者は、その語が他の者の商標の一部として上記のように使用されることを、甘受しなければならないものというべきである。」旨判断している。)
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/sinposei_kentoukai/document/2024_houkokusyo/01_trademark.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)