東京地判令和5年(ワ)70594【マットレス】<勝又>
本件発明における「圧着」とは、強く圧迫してくっつくことまでを要するものではなく、手足等の落ち込みを防ぐ目的から、「クッション体同士に隙間が生じない程度に相互に何らかの圧力がかかる状態」をいうと解される。
原告の測定により、被告製品の中材間には0.2MPa以上の圧力がかかっていることが認められるため、被告製品は「圧着」の要件を充足する。
⇒充足
(判旨抜粋)
ア 本件発明においては、マットレスカバーが複数のクッション体を圧着させながら嵌め込み可能である有底筒状のカバー部材を有するものとされ(構成要件G)、複数のクッション体は、圧着した状態で前記マットレスカバーに組入れられているものとされている(構成要件H)。
そして、「圧着」は「強く圧迫してくっつけること」という意味を有するが(広辞苑第七版。乙1)、「圧」が「おさえる。おしつけて動けなくする」を意味する(広辞苑第七版付録。甲15)ことからすると、「圧着」には「押さえてくっつく」といった程度の意味があるともいえる。
イ 次に、本件明細書をみると、「圧着」に関して、「例えば3個のクッション体を組入れる場合、まず底面側カバーの長さ方向両側の内面に2つのクッション体の側面をそれぞれ押し当てておき、これらのクッション体の間に、残りのクッション体(山折りしておいても良い)を下向きに押し込むことにより、全てのクッション体を圧着した状態でマットレスカバーに容易に組入れ
ることが可能となる。」(【0017】)との記載や、「図5は、マットレス1について、底面側カバー10bにクッション体21~23を圧着させながら収容する様子の一例を示す概念図である。」(【0050】)、「図5には、マットレスカバー10内に複数のクッション体21~23を組入れる方法として、底面側カバー10bの長さ方向両側の側面部13(側面部13の前側と後側)を利用する方法が例示されている。この方法では、まず側面部13の前側と後側に2つのクッション体21、23の側面をそれぞれ押し当てて、その後、クッション体22を鉛直方向下向きに押し込む。この方法により、複数のクッション体21~23を、圧着した状態でマットレスカバー10に容易に組入れることができる。」(【0051】)との記載があり、マットレスカバー内に複数のクッション体を組入れる方法に係る【図5】をみると、2つのクッション体の間に、別のクッション体が下方向に押し込まれて、マットレスカバー内に3つのクッション体が隙間なく接して設置されていることが図示されているものの、クッション体同士が相互に、左右方向に強い圧力をかけるというような表現はされていない。
このことに加え、前記1(2)のとおり、本件発明が、手足等が溝に落ち込みにくいマットレスを提供するという効果を奏するものであるところ、本件明細書の記載によると、上記効果は、「マットレスカバーの周面部(側面部)には伸張防止部材が設けられている」(【0011】)ことによるものであって、クッション体同士が強く圧迫してくっついていることによるものとはされて
いないことを総合すると、本件発明では、手足等が落ち込みにくくなるように、クッション体の境界部に手足等が落ち込むような隙間が生じていないことは予定されているといえるものの、クッション体同士が強く圧迫してくっついているような状態にあることまで予定されていると認めることはできない。
そうすると、本件発明における「圧着」とは、クッション体同士に隙間が生じない程度に相互に何らかの圧力がかかる状態であることをいうものと解するのが相当である。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94144.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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