平成17年(行ケ)10645【密封包装物の検査方法】<塚原>
*クレーム及び明細書記載のメカニズムが物理法則に反する。
⇒明確性要件、実施可能要件×
(判旨抜粋)
特許法36条4項及び6項違反についての審決の判断…
段落番号【0008】に,『これにより,密封包装物3の側面部31に高圧電源6の電圧出力端子からの電極4を接触ないし近接せしめるとき該密封包装物3内の導電性を有する内容物1は,電極4にかかる高電圧(0.6kV~30kV)のマイナス又はプラスの電位により帯電してマイナス(-)イオン又はプラス(+)イオンが発生する。』と記載され,図1にはマイナス(-)イオンのみが内容物全体に発生したように図示されているが,この『マイナス(-)イオン又はプラス(+)イオン』がどのように発生したのか不明であり,当業者は容易にこのことを実施することができない。すなわち,閉回路がなく変位電流が流れず,あるいは,密封包装物3の側面部31を電荷が移動しないのであれば,マイナス(-)イオン又はプラス(+)イオンを発生させるための電荷はどこから供給されるのかが不明である。もし内容物の外部から電荷が供給されずに内容物にマイナス(-)イオン又はプラス(+)イオンが発生するというならば,電荷保存則に反している。
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当裁判所の判断
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本願発明のように,「該密封包装物3の側面部31に…単一の電極4を接触ないし近接せしめて…該密封包装物3内の内容物1に電気絶縁性被膜2を介して帯電せしめ」ることは,電荷保存則に反し,何人にも実現することが不可能であるから,このような発明は不明確であるといわざるを得ず,また,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない…。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/052/033052_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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