平成10年 (行ケ)82【半導体装置】<篠原>
TI v. 富士通
*39条1項の「同一」性を認めて、無効とした。
(判旨抜粋)
…本件発明の要旨の規定に即してみれば、要件eの「平面状配置」は、それに先立って記載されている各要件から構成された半導体装置の回路が、その結果として「本質的に平面状に配置され」ることになることを総括して表現したにすぎない記載であるといわざるを得ない。すなわち、そのような意味で、他の構成要件を重複記載したに等しく、特段の技術的意義を有しない…。 そして、そのような性質の記載として要件eの「平面状配置」が意味するところを検討するに、…本件発明の半導体装置において、複数の回路素子は、ラップ加工により表面が磨かれ拡散領域が形成された半導体薄板の拡散領域と本体との間、又は拡散領域自体の間のP-N接合によって形成されることから、それらが形成される面は凸凹が少ない平坦となり、結果として、本質的に平坦な配置となるものと考えられる。また、回路接続用導電物質の土台となる不活性絶縁物質が半導体薄板に蒸着により形成されることからその表面が平坦であることは明らかであるところ、回路接続用導電物質は、不活性絶縁物質上に被着されることから、これも平坦と解して差し支えない。そして、複数の回路素子が平坦に配置され、複数の回路素子間を接続する回路接続用導電物質も平坦であれば、それらによって構成される電子回路が平坦に配置されたことになるのは当然である。…したがって、相違点⑥が実質的な相違点ではないとした審決の判断に誤りはない。… 本件発明と原発明とは、明細書の特許請求の範囲の記載の差異によって、その包含する範囲に差異が生ずる点があることは認められるものの、当業者において、明細書の発明の詳細な説明に記載された発明の目的、作用効果、実施例の記載等を総合し、当該特許請求の範囲の記載の差異を両発明の技術的思想の差異として把握することができるものとは到底いい得ないものであって、両発明は、特許請求の範囲の記載の差異にかかわらず、実質的に同一の発明であるものと解するのが相当である。したがって、審決が、本件出願につき旧特許法9条1項の適用を受けることができないとして、その出願日の遡及を否定した上、現実の出願日である昭和46年12月21日の出願に係る本件特許は、特許法39条1項の規定に違反してされたものであるとしたことに誤りはない。
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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