大阪地判平成10年(ワ)12899【電動式パイプ曲げ装置】
*被告は「電動式直管ベンダー」「ベンダーシュー」「ベンダー用ガイド」を同時に販売した。3つを組み立てると特許権侵害
⇒直接侵害とした!!
*第五要件(禁反言)を否定して、均等論を認めた。
進歩性に影響ない主張
(判旨抜粋)
原告…が本件発明の特許出願経過中に意見書等でパイプホルダ(…)に関して述べた部分は、拒絶理由通知ないし拒絶査定で引用された公知技術と対比して、本件発明はパイプを支持する部分がパイプの曲げ開始点にはなく、曲げ開始点の両側に分散されており、曲がりの外側から好ましくない横圧を受けることがないということを主張したほかは、本件全文補正前のパイプ支持部材について特許請求の範囲第1項の記載に即して引用例との差異を述べたにすぎず、特にパイプ支持部材の構造についてそれ以外のものを排除する意思を示したものとはいえない。そして、パイプ支持部材(パイプホルダ)は、本件全文補正により当初明細書では「基板を介して前記マトリックスに連結されると共に、曲げ加工の際前記マトリックスと前記副マトリックスと協働できるように前記基板に取り付けられたピンのまわりを自由に回転する補助装置としての機能を果たす直軸の半円溝を有するパイプ支持部材」とされていたのが、「前記回転フォーマの外周部に設けられてパイプの曲げ開始部近傍を保持し、その回転フォーマの回転時にパイプを回転フォーマと一体的に保つパイプホルダ(…)」とされたものであるから、前記意見書等でパイプ支持部材について述べた部分のうち上記補正で変更された点に関するものは、補正後の特許請求の範囲の解釈を限定する理由はない(…)。本件発明は、パイプホルダに関する前記のような変更にもかかわらず、特許要件を満たすものとして特許されたものであるから、出願経過における意見書等でのパイプホルダに関する出願人の陳述は、出願人が特許庁審査官の拒絶理由又は特許異議申立の理由に対応して特許請求の範囲記載の意義を限定するなどの陳述を行い、それが特許庁審査官ないし審判官に受け入れられた結果、特許をすべき旨の査定がされた場合に当たるものとは認められない。
よって、被告の禁反言の法理による限定解釈の主張は採用できない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/264/012264_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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