令和6年(行ケ)10002【土木工事用不織布】<東海林>
*公然実施品の仕様を変更する動機付けあり。
⇒進歩性×
(判旨抜粋)
引用発明1の土木工事用不織布において、耐候性、耐摩耗性及び遮光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景観を損なうことの防止、並びに不織布の伸び率測定のための斑模様の明確さを好適なものとするために、カーボンブラックにより着色した黒色繊維の比率を増減することは、当業者の設計事項にすぎないというべきである。また、白色繊維と、カーボンブラックにより着色した黒色繊維を混合した土木工事用不織布において、黒色繊維の割合を高めれば、斑模様が濃くなって、斑点の間の距離の測定に基づく不織布の伸び率の測定が容易になるほか、耐候性、耐摩耗性及び遮光性の向上、光の反射の抑制といった効果があることが、上記のとおり本件出願日の時点における技術常識であったといえるから、黒色繊維の比率を7.5%より高める動機付けがあったということができる。…
800Z製品について、製品の同一性あるいはその品質を維持するために、仕様書で定められた仕様の遵守が求められるとしても、同製品を基に、仕様の一部を変更して、新たな仕様の土木工事用不織布の製品を開発、製造しようとすることは当然に行われることであって、800Z製品の仕様として黒色繊維の比率が特定の値に定められているからといって、この値を変更することに阻害要因があると認められることにはならず、800Z製品の使用における黒色繊維の比率が1桁である5%とされていることから、この比率を2桁の10%にすることに阻害要因があると解することもできない。
そして、…黒色繊維の比率を特定の割合又は特定の範囲に定めることについて特段の技術的意義があるとは認められず、かつ、カーボンブラックにより着色した黒色繊維の比率を高める動機付けがあったといえることからすれば、引用発明1について、その黒色繊維の比率を、上記仕様書に記載された数値から変更することに阻害要因があるとは認められない。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/103/093103_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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