令和2年(行ケ)10053【二酸化炭素経皮・ 経粘膜吸収用組成物】<菅野>

 

主引例に本件発明の課題があるとは認識できない。

⇒進歩性〇

⇒あくまで、主引例からどのような課題を認識できるかを考える必要がある。

 

⇒相違点1(「増粘剤の含有量が1~15質量%」)は容易想到でない。

 

(判旨抜粋)

甲1発明において,あえてバブが「完全に溶けるまで待つ」と記載されていることには,バブから十分な量の二酸化炭素が発生し,水中に溶存するのを待つという技術的意義があると解される。そうすると,甲1に接した当業者は,甲1の上記記載から,甲1発明では,バブ片を完全に溶かし,湯に溶存している二酸化炭素を経皮吸収させて血行促進作用を図るものと理解するから,甲1発明に「気泡状の二酸化炭素を持続的に保持する」という課題があると認識するとは認められない。…甲1には,バブ片が「完全に溶けるまで待つ」と明記されているのであり,当業者がバブからの気泡状の二酸化炭素の発生を視認したとしても,溶存二酸化炭素を作り出す過程・手段であるにすぎず,それ自体が経皮吸収に寄与するとはいえない気泡状の二酸化炭素に着目するとは認め難いし,そもそも甲1発明において,湯に溶解せず空気中に二酸化炭素 が発散してしまうことを防ぐことが課題とされていることを認めるに足りる証拠もない。なお,原告は,「気泡状の二酸化炭素を持続的に保持する」という課題は自明又は容易に発見できるのであるから,それが甲1発明から認識できるか否かを判断する必要はない旨主張するが,…本件発明が甲1発明から容易に想到できたか否かを考えるに当たっては,あくまで甲1発明に接する当業者が甲1発明からどのような課題を認識できるかを考えることが必要になるのであるから,原告の主張は失当というほかない。

 

090492_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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