令和2年(ネ)10039<鶴岡>【アンテナ装置】

 

*サポート要件×

 

*クレームされていない構成/数値を問題とした

(電気/機械でサポート要件違反は珍しい)

 

「請求項1…発明は,そもそもアンテナ素子以外に平面アンテナユニットが組み込まれていないアンテナ装置の発明を含み…」

 

(判旨抜粋)

発明の詳細な説明に記載された発明の課題は,限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置に既設の立設されたアンテナ素子に加えてさらに平面アンテナユニットを組み込むと相互に他のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという課題であり…,このような課題を当業者が認識するためには,限られた空間しか有しないアンテナ装置において,既設の立設されたアンテナ素子に加えて 新たに平面アンテナユニットを組み込むことが前提となる。しかし,請求項1に記載された発明は,そもそもアンテナ素子以外に平面アンテナユニットが組み込まれていないアンテナ装置の発明を含み…,そのような構成の発明の課題は,発明の詳細な説明には記載されていない。そのため,請求項1に記載された発明は,当業者が発明の詳細な説明の記載によって課題を認識できない発明を含むものであり,当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えたものである。

また,請求項1に記載された発明は,アンテナ素子に加えて平面アンテナユニットが組み込まれてはいるものの,アンテナ素子の下縁と平面アンテナユニットの上面との間隔が約0.25λ未満であるアンテナ装置の発明を含むが…,発明の詳細な説明には,課題を解決する方法として,平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔を約0.25λ以上とすることが記載されており,アンテナ素子の下縁と平面アンテナユニットの上面との間隔を約0.25λ未満とするならば,発明の詳細な説明に記載された課題を解決することはできない。そのため,請求項1に記載された発明は,この点においても当業者が発明の詳細な説明に記載された解決手段によって課題を解決できると認識できない発明を含むものであり,当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えたものである。…

発明の詳細な説明の記載によれば,第1の課題に相当する課題は,背景技術の課題として,出願人の特許出願…により解決されたものとされており,…控訴人が第1の課題を解決する手段として発明の詳細な説明に記載されていると主張する技術事項である…。

控訴人は,本件明細書に記載された基礎出願…及びその国際出願…は,請求項1に対応する内容を含むものであるとした上で,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明は,基礎出願…及び国際出願…の内容を含むから,発明の詳細な説明に記載された発明も,請求項1に記載された発明を含むと主張する…。しかし,記載要件の適否は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載に関する問題であるから,その判断は,第一次的にはこれらの記載に基づいてなされるべきである。このことは,サポート要件を充足するかどうかの判断に際しての課題の認定に関しても同様であり,基礎出願…及び国際出願…の内容に基づいて発明の詳細な説明に記載された課題を認定する旨の控訴人の上記主張は,採用することができない。       https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/904/089904_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)