【職業選択の自由】令和4年(ネ)10059<本多>
*芸能事務所による契約終了後の制約が公序良俗に反すると判断された!!
バンドグループの元メンバー(一審原告ら)が、所属事務所(一審被告会社)との専属的マネジメント契約終了後に、バンド名やグループ名の使用、活動継続を事務所側から妨害されたと主張した。
1.競業避止義務条項の無効性
契約終了後6か月間、他者との契約や活動を禁じる条項について、裁判所は「職業選択の自由を過度に制約するものであり、公序良俗に反する」として無効と判断した。
2.バンド名に関する権利
バンド名には構成メンバー全員にパブリシティ権および実演家人格権(氏名表示権)が認められるとし、事務所側がバンド名の排他的使用権や商標権を有するとの主張を否定した。
3.写真の著作権
グループの写真の著作権が事務所に帰属するとの主張も認めず、撮影者が著作権を保有していると判断した。
4.事務所の妨害行為の違法性
事務所が虚偽の情報を含む通知や要請を行い、原告らの活動を妨害した行為は不法行為に該当するとした。
5.損害額
財産的損害(約70万円)、精神的損害(20万円)、弁護士費用(9万円)の合計99万円
(判旨抜粋)
一審被告らは、本件条項について、先行投資回収のために設けたものであると主張しているところ、一審原告らの需要者(一審原告らのファン)に訴求するのは一審原告らの実演等であって、一審被告会社に所属する他の実演家の実演等ではないのであるから、本件条項により一審原告らの実演活動を制約したとしても、それによって一審被告会社に利益が生じて先行投資回収という目的が達成されるなどということはなく、本件条項による一審原告らの活動の制約と一審被告会社の先行投資回収には何ら関係がないというほかない。また、仮に、一審被告会社に先行投資回収の必要性があり、それに関して一審原告らが何らかの責任を負うような場合であったとしても、これについては一審原告らの実演活動等により生じる利益を分配するなどの方法による金銭的な解決が可能であるから、上記必要性は、本件専属契約終了後の一審原告らの活動を制約する理由となるものではない(加えて、本件専属契約の合意解約がされた令和元年7月13日までに、本件専属契約が締結された平成22年8月1日から約9年間、一審原告ら全員が本件グループに加入することとなった平成24年7月からでも約7年間が経過しており、また、本件専属契約も数回にわたり更新されてきたものであること(前提事実(2))からすると、本件においては、一審被告会社による先行投資の回収は当然に終了しているものと考えられるところである。)。
そうすると、その余の点につき検討するまでもなく、本件条項による制約には何ら合理性がないというほかないから、本件条項は公序良俗に違反し無効であると解するのが相当である。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/677/091677_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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