NAKAMURA & PARTNERS
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【特許★★★】第5世代分割出願における分割要件違反により、第7世代の特許が、原出願公開公報により新規性欠如の無効理由を有すると判断された。 -知財高判令和6年(行ケ)第10086号【車両誘導システム】事件<本多裁判長>-

2026年01月19日

 

◆判決本文

 

【本判決の要旨、若干の考察】

1.事案の概要

第4世代当初明細書等には、車両誘導システムの発明において、①ETCを利用できない車両がETC車専用レーンに進入した場合に、当該車両を、分岐レーンを走行させて戻すという事項、及び、②戻す対象となる車両は、ETC車載器と路側アンテナとの無線通信が可能か否かにより判定するという事項が、必要不可欠な構成として記載されており、上記①及び②を必須の構成としない技術思想は、開示されていない。

他方、第5世代分割出願の特許請求の範囲に記載された各発明は、一般道路から有料道路のパーキングエリア若しくはサービスエリアに向かう入口側のレーンの途中から分岐する一般道路に戻るレーン、又は有料道路のパーキングエリア若しくはサービスエリアから一般道に向かう出口側のレーンの途中から分岐するパーキングエリア若しくはサービスエリアに戻るレーンを設けた三叉路型レーンにおいて、分岐した先の左右2か所の遮断機の開閉に関して、判定手段を特定しないことで、ETCシステムの路側アンテナと車載器との間の無線通信の不能又は不可が発生しているかの判定を伴うことに限らない任意の基準・方法によって、遮断機の一方は閉じたままで他方が開いて、本レーンをそのまま走行するか、分岐レーンに進むかを誘導するという新たな技術的事項を導入するものであり、①分岐レーンを走行させて車両を戻す場合についての限定がなく、②戻す対象となる車両を判定する方法についての限定もないのであるから、これら2点の構成において、第4世代当初明細書等に記載された必須の構成を、無限定に上位概念化させていることとなる。

したがって、第5世代各発明は、第4世代当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものというべきであり、第5世代分割出願は、特許法44条2項本文の適用を受けることができず、その出願日は、現実の出願日である平成26年12月2日となる。

そうすると、第7世代の分割出願に当たる本件出願の出願日も、平成26年12月2日までしか遡及し得ないこととなる。

そして、平成26年12月2日より前に日本国内において頒布された甲9(最初の原出願の公開特許公報である特開2006-79580号公報)には、本件発明1及び2それぞれの構成を含む、有料道路料金所に設置された車両誘導システムの構成が記載されており、同じ構成の車両誘導システムをサービスエリア又はパーキングエリアに設置できることが記載されている。

そうすると、本件各発明は、いずれも、甲9に記載された発明であって、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない。

 

2.判旨抜粋

特許請求の範囲の記載によると、第5世代各発明は、いずれも、ETC専用の入口料金所、出口料金所又はその双方を有するスマートインターチェンジであって、当該料金所が設けられるレーン(以下「本レーン」という。)及び本レーンから分岐して車両が戻るレーン(以下「分岐レーン」という。)からなる三叉路型レーン、三叉路型レーンの分岐前の1か所と分岐した先の左右2か所に設けられた遮断機並びに三叉路型レーンの分岐前の本レーンに設けられた車両検知装置をその構成に含み、車両検知装置により車両が検知されることを契機として、分岐した先の左右2か所に設けられた遮断機のいずれかのみを開くものとして記載されている。

他方、第5世代各発明では、少なくとも、①分岐レーンを走行させて車両を戻す場合がいかなる場合であるか(第4世代当初明細書等の【請求項1】「路側アンテナ車載器と間で通信不能又は通信不可が発生したとき」)や、②車両を戻すべき場合に当たるか否かをETCシステムの無線通信により判定すること(同【請求項3】「前記路側アンテナは、車載器との間で無線通信可能か否かを判定するためのゲート前アンテナと入口情報及び料金情報の送受信を行なうETCアンテナとを有している」のような事項)が、発明特定事項として記載されていない。

したがって、第5世代各発明においては、①分岐レーンを走行させて車両を戻す場合についての限定がなく、②戻す対象となる車両を判定する方法についての限定もないということになる。

…

第4世代当初明細書等には、ETC車専用レーンにETCを利用できない車両が進入すると渋滞や後続車との衝突の危険があるという課題に対し、その解決手段として、これらのETCを利用できない車両がETC車専用レーンから離脱し得る手段を設け、離脱手段としてETC専用レーンから分岐するレーンを設けることや、車両の進入を検知した場合に遮断機を下ろすことにより車両を誘導すること等が記載されており、ETCを利用できない車両を検知したときに、この車両をETC車専用レーンから離脱させるべく誘導する車両誘導システムが開示されていると認められる。また、ETCを使用できない車両を検知し、これを判別する方法としては、【0010】や【0012】にみられるように、「路側アンテナと車載器との間で通信不能・不可」であるか否かによって行うとしており、その実施形態の説明のうち【0031】~【0053】、【0066】~【0068】、【図3】~【図8】、【図12】において、車両がETCによる無線通信が可能か否かによって行うことが開示されており、また、逆進入防止機能を充実させたインターチェンジの実施例である【0054】~【0062】、【図9】、【図10】、スマートインターチェンジの車両誘導システムの実施例である【0063】~【0065】、【図11】も、「図9は、図4の変形例」(【0055】)、「一般車レーンB、Cが無いことを除き、入口料金所12のレーン(A→D)と(A→E)の役割、及び出口料金所13のレーン(A→D)と(A→E)の役割は、図3、4、6及び7のそれと同じである」(【0064】)とされており、いずれも車両がETCによる無線通信が可能か否かによって誘導されることが前提とされている。そうすると、第4世代当初明細書等には、渋滞や後続車との衝突の危険という課題を解決するため、ETCを利用できない車両をETC車専用レーンから離脱させる車両誘導システムの発明において、具体的な課題解決手段として、①ETCを利用できない車両がETC車専用レーンに進入した場合に、当該車両を、分岐レーンを走行させて戻すという事項、及び、②戻す対象となる車両は、ETC車載器と路側アンテナとの無線通信が可能か否かにより判定するという事項がそれぞれ記載されていると認められる。そして、第4世代当初明細書等の全ての記載を総合しても、他に、分岐レーンを走行させて車両を戻す場合や、戻す対象となる車両を判定する方法を開示し、又は示唆する記載はないから、上記①及び②の事項は、第4世代当初明細書等に開示された発明において、課題解決のために必要不可欠な構成であるというべきである。…

これに対し、…第5世代各発明は、一般道路から有料道路のパーキングエリア若しくはサービスエリアに向かう入口側のレーンの途中から分岐する一般道路に戻るレーン、又は有料道路のパーキングエリア若しくはサービスエリアから一般道に向かう出口側のレーンの途中から分岐するパーキングエリア若しくはサービスエリアに戻るレーンを設けた三叉路型レーンにおいて、分岐した先の左右2か所の遮断機の開閉に関して、判定手段を特定しないことで、ETCシステムの路側アンテナと車載器との間の無線通信の不能又は不可が発生しているかの判定を伴うことに限らない任意の基準・方法によって、遮断機の一方は閉じたままで他方が開いて、本レーンをそのまま走行するか、分岐レーンに進むかを誘導するという新たな技術的事項を導入するものであり、①分岐レーンを走行させて車両を戻す場合についての限定がなく、②戻す対象となる車両を判定する方法についての限定もないのであるから、これら2点の構成において、第4世代当初明細書等に記載された必須の構成を、無限定に上位概念化させていることとなる。したがって、第5世代各発明は、第4世代当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものというべきである。…

被告は、第5世代発明1について、第4世代当初明細書等に記載された発明の中から、車両検知装置と遮断機とを利用して、車両を入口側レーンをそのまま走行させるか戻り路に戻すかのいずれかに誘導するようにした誘導手段に関する発明のみを取り出して記載したものであると主張する。しかし、車両検知装置と遮断機を利用して、車両を入口側レーンをそのまま走行させるか戻り路に戻すかのいずれかに誘導するようにした誘導手段の発明というのであれば、車両検知装置と遮断機とを連関させるべく、検知した車両をいずれのレーンに誘導するかを決定する手段・方法がなければ誘導手段として機能し得ないところ、…第4世代当初明細書等には、検知した車両をいずれのレーンに誘導するかを決定する手段・方法としては、ETC車載器と路側アンテナとの無線通信が可能か否かを判定する方法しか記載されていないのであるから、第4世代当初明細書等から、検知した車両をいずれのレーンに誘導するかを決定する手段・方法を特定することなく、車両検知装置と遮断機とを利用して車両をいずれかのレーンに誘導するようにした誘導手段の発明を取り出すことは、第4世代当初明細書等に記載された技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ない。なお、被告は、当初出願の発明が第1及び第2工程からなる製造方法である場合に、第1工程のみの発明と補正することは、新規事項の追加に当たらないから、本件において、第4世代当初明細書等に記載された発明のうち下流側の構成のみを分割出願することは、新規事項の追加に当たらないとも主張する。しかし、第4世代当初明細書に記載されているのは、次の【図5】にみられるような処理フロー、すなわち車両検知装置による車両の検知、ゲート前アンテナとETC車載器との通信、ETC料金徴収の可否の判定、車両誘導装置による誘導、遮断機の開閉といった処理が順を追って行われ、全体としてその目的を達する車両誘導システムであって、その主要な処理(【図5】を例にすると、S04、S06、S07)を省略したものは、誘導手段として機能し得ないのであるから、中間生成物を得る第1工程と、最終生成物を得る第2工程からなる物の製造方法の発明と当然に同視して、下流側の構成のみを分割出願することが許容されるということはできない。したがって、被告の主張は採用することができない。(【図5】)

被告は、第5世代発明1は、不正車両を防止することを課題として、三叉路型レーンの分岐した先の左右2か所に設けた遮断機を常時「閉」とし、車両の通過を検知していずれかの遮断機を開くことにより、当該レーンから逆進入する不正車両を防止するという独立した発明であると主張する。しかし、第4世代当初明細書等のうち不正車両の進入を防止する旨の言及がある【0054】~【0062】においては、このような課題を解決するための手段として、分岐した両レーンのそれぞれに新たに遮断機と車両検知装置を設けて閉鎖区間を形成することが記載されている上に、「図4で説明した実施例では、料金不払いなどを目的とした不正車両が、ETC車用レーンの出口や離脱レーンの出口から遡ってETC車用レーンに逆進入することを防ぐことが出来ないという問題点を有している。」(【0054】)として、分岐した先の左右2か所の遮断機の一方は閉じたままで他方が開くという構成(【図4】を用いて説明する【0034】、【0035】に記載された構成)では、被告が主張する課題が解決されないことが明記されている。このような記載に照らすと、当業者において、第4世代当初明細書等に、被告が主張するような、不正車両の逆進入を防止することを課題として、その解決手段を第5世代各発明の構成とする発明が記載されていると認識することはできないというべきである。したがって、被告の主張は採用することができない。…

 

3.同日付の侵害訴訟判決(令和7年(ネ)第10035号)~本判決と同じ論理で非充足

(1)「一般車用出入口」(構成要件2E)の非充足

本件明細書の記載等から、「一般車用出入口」に、本件発明2に係る車両誘導システムが設置されている有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリア等に隣接する、別のインターチェンジの一般車用出入口は含まないと判断された。

(判旨抜粋)

本件親出願明細書の記載からは、ETCによる料金徴収が不可能であったためにスマートインターチェンジを利用できなかった車両が、隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口を利用することが、本件発明2に係る誘導手段による誘導の結果であることを読み取ることはできない。したがって、構成要件2Eの「一般車用出入口」に、本件発明2に係る車両誘導システムが設置されている有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口が含まれると解することはできない。

 

(2)「誘導手段」(構成要件2E)の非充足

「誘導」とは客観的に導くことであり、標識等がない以上、(Uターンを指示する標識等がなく)運転者がUターンしてETC車専用出入口手前に戻ることが可能であったとしても、ETC車専用出入口手前に戻るルートへの「誘導手段」にあたらないと判断された。

(判旨抜粋)

「誘導」とは、目的に向かっていざない導くことを意味するところ、原告各設備内にはUターンを指示する標識等は存在しないのであるから、原告各設備が、ETCによる料金徴収が不可能な車両を再度ETC車専用出入口手前へ戻るルートにいざない導いているということはできない。当該車両の運転者が、その選択によりUターンをして再度ETC車専用出入口手前へ戻ることが事実上可能であるとしても、そのような運転者の意思による車両の走行を、原告各設備に設置された誘導手段によるものと評価することには無理があるというほかない。 したがって、原告各設備は、いずれも、ETCによる料金徴収が不可能な車両を「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート」に誘導する誘導手段を備えているとはいえない

 

4.若干の考察

分割出願の割合が増加している昨今、分割ツリーの途中の特許出願に新規事項追加があり、出願日が原出願まで遡れないことにより新規性・進歩性が否定される事態が増加することが懸念される。これまでは、裁判所でそのように判決された事案は少なかったが、これから増えることが想定される。

特に、2025年に、特許庁からいわゆる『除くクレーム』の補正要件を厳格化する方向で、審査基準改訂を示唆するメッセージが出されている。特許として成立した『除くクレーム』の発明のなかに新規事項追加の無効理由を有すると判断されるものが現れれば、上記問題が顕在化し、今後、特許実務が混乱する事態が懸念される。(産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会第18回 審査基準専門委員会ワーキンググループ資料参照)

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kijun_wg/18-shiryou.html

 

【関連裁判例(分割要件について)】

(1)知財高判令和6年(行ケ)第10086号【車両誘導システム】事件<本多裁判長>(本判決)

*子出願が分割要件違反⇒孫出願の出願日は親出願まで遡及しない。

<判旨抜粋>

第4世代当初明細書等には、ETC車専用レーンにETCを利用できない車両が進入すると渋滞や後続車との衝突の危険があるという課題に対し、その解決手段として、これらのETCを利用できない車両がETC車専用レーンから離脱し得る手段を設け、離脱手段としてETC専用レーンから分岐するレーンを設けることや、車両の進入を検知した場合に遮断機を下ろすことにより車両を誘導すること等が記載されており、ETCを利用できない車両を検知したときに、この車両をETC車専用レーンから離脱させるべく誘導する車両誘導システムが開示されていると認められる。また、ETCを使用できない車両を検知し、これを判別する方法としては、【0010】や【0012】にみられるように、「路側アンテナと車載器との間で通信不能・不可」であるか否かによって行うとしており、その実施形態の説明のうち【0031】~【0053】、【0066】~【0068】、【図3】~【図8】、【図12】において、車両がETCによる無線通信が可能か否かによって行うことが開示されており、また、逆進入防止機能を充実させたインターチェンジの実施例である【0054】~【0062】、【図9】、【図10】、スマートインターチェンジの車両誘導システムの実施例である【0063】~【0065】、【図11】も、「図9は、図4の変形例」(【0055】)、「一般車レーンB、Cが無いことを除き、入口料金所12のレーン(A→D)と(A→E)の役割、及び出口料金所13のレーン(A→D)と(A→E)の役割は、図3、4、6及び7のそれと同じである」(【0064】)とされており、いずれも車両がETCによる無線通信が可能か否かによって誘導されることが前提とされている。そうすると、第4世代当初明細書等には、渋滞や後続車との衝突の危険という課題を解決するため、ETCを利用できない車両をETC車専用レーンから離脱させる車両誘導システムの発明において、具体的な課題解決手段として、①ETCを利用できない車両がETC車専用レーンに進入した場合に、当該車両を、分岐レーンを走行させて戻すという事項、及び、②戻す対象となる車両は、ETC車載器と路側アンテナとの無線通信が可能か否かにより判定するという事項がそれぞれ記載されていると認められる。そして、第4世代当初明細書等の全ての記載を総合しても、他に、分岐レーンを走行させて車両を戻す場合や、戻す対象となる車両を判定する方法を開示し、又は示唆する記載はないから、上記①及び②の事項は、第4世代当初明細書等に開示された発明において、課題解決のために必要不可欠な構成であるというべきである。…

⇒第5世代各発明は、上記①及び②の事項(課題解決のために必要不可欠な構成)を有しないから、新規事項追加である。

 

(2)東京地判令和元年(ワ)第23164号【画像形成装置】事件<田中裁判長>

*子出願が分割要件違反⇒孫出願の出願日は親出願まで遡及しない。

※同じ特許の令和2年(行ケ)10131;「上記追加部分を削除するなどの補正をすることによって,本件出願2の分割要件違反の状態を解消する機会があったこと…を総合考慮すれば,本件出願2の審査官が上記分割要件違反を看過したことは適切ではなかったが…」と判示した。

<判旨抜粋>

…本件特許出願は,本件出願1の分割出願である本件出願2に係る,更にその分割出願である本件出願3に係る,更にその分割出願に係る特許出願であるところ,被告は,本件出願2が分割要件違反になる旨を主張するので,この点について検討する。

…分割出願が適法な場合には,その効果は原出願の出願日に遡及する(特許法44条2項本文)が,分割出願が不適法な場合には,分割出願をした時点を基準として実体審査が行われることになる。そして,分割出願の出願日が原出願の出願日へ遡及するためには,①分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること,及び,②分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要するものと解するのが相当である。なお,原出願の明細書等について補正をすることができる時期に特許出願の分割がされた場合には,上記①の要件が満たされれば,上記②の要件も満たされるものと解されるところ,本件出願2は…本件出願1の明細書等について補正をすることができる時期…にされたものではないことからすれば,本件出願2の分割要件としては上記①の要件とは別に,上記②の要件を満たすことも必要となると解される。…

…本件出願2が分割出願された時点における本件出願1の明細書等,すなわち,本件出願1の特許査定時の明細書等…と,本件出願2の明細書等(本件出願2分割時明細書…)とを比較すると,本件出願2分割時明細書は,例えば,指定キープ指示部によって,電源OFF後も加工条件をキープし,次回以降最初に表示される画面に表示することに関する記載が追加されている点(段落【0100】),倍率を指示する「一つ上」や「一つ下」の表示によって,使用頻度の高い加工条件である倍率の設定数を減らし,メニューの設定数を減らすことに関する記載が追加されている点(段落【0105】),登録されたメニューを変更不可にロックする手段を設けることによって,安易なメニュー変更による誤指示を防止することに関する記載が追加されている点(段落【0145】),図7ないし図15及びこれに関連する記載が追加されている点(段落【0041】…)で,本件出願1査定時明細書の記載と相違しており,本件出願2分割時明細書は,本件出願1査定時明細書には存在しない記載事項を含むものであるから,本件出願1査定時明細書に記載された事項の範囲内であるとはいえない…。そうすると,本件出願2は,…②の分割要件を満たさないから,分割要件違反となるものというべきであり,本件出願2には特許法44条2項の適用がない。

…以上によれば,本件特許出願が本件出願3に対して分割要件を満たし,本件出願3が本件出願2に対して分割要件を満たすとしても,本件出願2は本件出願1に対して分割要件を満たしていないから,本件出願2の出願日は,本件出願1の出願日まで遡及せず,現実の出願日…であることとなり,同様に,本件特許出願の遡及する出願日は,本件出願2の出願日…となる。

 

(3)大阪高判平成14年(ネ)第2776号【コンクリート埋設物】事件(未来工業v.日動電工)

*子出願が手続補正の遡及効により、分割要件違反となった。

⇒孫出願の出願日は親出願まで遡及しない。

*子出願の無効が確定したことは、孫出願の出願日が親出願まで遡及するか否かとは無関係である。

<判旨抜粋>

子出願の分割出願についてみると,子出願の…補正は,親出願の出願当初明細書又は図面に記載されておらず,子出願の出願当初明細書又は図面にも記載されていない事項を含み,上記補正後の子出願の明細書は,親出願の出願当初明細書又は図面の範囲内でない事項を含むものであるから,子出願は,親出願から特許法44条1項に基づき適法に分割されたものといえないことになる。そして,子出願は,その後,特許登録され,本件無効審決を経て確定し,もはや,手続補正や訂正審判により…手続補正書による内容を是正する余地はなく,上記補正後の内容で確定したから,子出願は,親出願から特許法44条1項に基づき適法に分割されたものとはいえず,親出願の時に出願したとみなされることはない。そして,親出願の時に出願したとみなされないことから,…子出願の出願日は…補正書を提出した日…とみなされることになる。…この点に関し,原告は,子出願が特許法44条により適法に分割された分割出願であり,…手続補正書による補正により,特許法40条に基づき,出願日が…繰り下がったに過ぎず,子出願の分割自体が不適法,無効となるものでない旨主張するが,…そもそも子出願の分割は分割要件を具備しておらず不適法であることは明らかであって,原告の上記主張は採用することはできない。…

本件出願1(孫出願)は,子出願を親出願とする分割出願としては,その他の分割の要件も満たしているといえるから適法といえる。しかしながら,親出願との関係では,…子出願が親出願から適法に分割されたものとはいえない以上,本件出願1(孫出願)も親出願の時に出願したとみなされることはなく,子出願の時に出願したとみなされることとなり,子出願の出願日とみなされる…日に出願したとみなされることになる。…

孫出願の出願日の遡及の利益の享受は,あくまで子出願の出願日の利益の享受であって,子出願が分割要件を満たして分割が適法に行われることを前提とするものであり,孫出願の出願日が子出願と無関係に本来の分割可能な時期から離れて無限定に 親出願のときまで遡及するものではない。そして,特許法は…補正がその手続の初めに遡って効力を有することを認めており,特許に関する手続はこのような補正の遡及効を前提に運用されている。現に分割出願においても,出願の分割時には原出願に係る発明と分割出願に係る発明が同一であったが,その後に原出願の明細書又は図面が補正され両者の発明が同一でなくなった場合は,分割出願は適法なものとされ,他方,出願の分割時には原出願に係る発明と分割出願に係る発明が同一ではなかったが,その後に原出願の明細書又は図面が補正され両者の発明が同一となった場合は,分割出願は適法でないものとされており,しかも,このような補正の遡及効により分割不適法の事態などが生じる場合でも,補正を行った者はさらにこれを修正する補正を行うことにより不適法理由の解消を行うことなどが可能である。これらの点を考慮すると,親出願,子出願,孫出願と順次分割がされた場合において,子出願から孫出願への分割が分割要件に欠けるところがなかったとしても,子出願についての補正の有無,内容いかんにより,子出願の親出願からの分割がその要件を具備するか否かの帰趨が変動し,そのために,子出願の出願日が変動し,さらに孫出願の出願日が変動するような事態が生じることもやむを得ない…。

 

(4)東京高判平成15年(行ケ)第65号【コンクリート埋設物】事件(未来工業v.日動電工)

*子出願が手続補正の遡及効により、分割要件違反となった。

⇒孫出願の出願日は親出願まで遡及しない。

<判旨抜粋>

…本件において,本件特許出願(孫出願)は,親出願からの分割出願である子出願を更に分割出願したものであるから,孫出願(本件特許出願)及び子出願の各分割出願がそれぞれ特許法旧44条1項の分割要件を満たし,かつ,本件発明1,2が親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである場合には,本件発明1,2の出願日は,親出願の出願日まで遡及することになる。しかしながら,子出願に係る発明は,平成5年10月29日付け手続補正書(甲17)により補正され,親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないこととなり,いったん特許権の設定登録がされた後,当該補正がされた発明のまま,その無効審決が確定し,子出願に係る特許権は,初めから存在しなかったものとみなされた。したがって,当該補正がされた発明はもはや訂正される余地はなく,子出願に係る発明は,親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないこととなったから,子出願が分割の実体的要件を満たさないことは明らかである。そうすると,孫出願の分割の適否を検討するまでもなく,孫出願である本件特許出願の出願日が親出願の出願日まで遡及する余地はない…。…

…子出願…補正は,本来,不適法なものとして却下されるべきものであったが,却下されることなく,当該補正がされた発明のまま,いったん特許権の設定登録がされた後,その無効審決が確定し,子出願に係る特許権が初めから存在しなかったものとみなされた…,子出願が分割要件を満たして分割が適法に行われたものでない…。…

…原告は,さらに,本件特許出願に適用される昭和58年5月特許庁作成に係る審査基準においても,原出願が取り下げられ又は放棄された日と同日に出願された分割出願は適法であり,ただ,原出願が取り下げられ,放棄され又は無効とされた場合に,これらの行為がされた時点での原出願に係る発明と分割出願に係る発明とが同一であるときには,分割出願は適法でないものとするとされており,子出願に係る権利が確定した後に無効になったからといって,孫出願までが無効になるものではないことは,特許庁における運用であると主張する。しかしながら,子出願は,上記のとおり,特許法旧40条により,手続補正書の提出日が出願日とみなされたものであって,子出願が取り下げられ,又は放棄されたとみなされたものではないし,子出願が無効になったから孫出願が無効であるとの判断をしているものでもないことは明らかである。原告の上記主張は,本件審決を正解しないでこれを論難するものにすぎず,採用の限りではない。

 

(5)東京地判平成15年(ワ)第9215号【止め具及び紐止め装置】事件(JP3367651)<三村裁判長>

*分割出願と補正は、同じ範囲で許される。

=東京地判平成10年(ワ)8345【養殖貝類の耳吊り装置】事件<三村裁判長>

<判旨抜粋>

特許出願の分割については,特許法44条1項に,「特許出願人は,願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる期間内に限り,2以上の発明を包含する特許出願の一部を1又は2以上の新たな特許出願とすることができる。」と規定されているが,この分割出願が適法と認められるためには,もとの出願が特許庁に係属し,かつ,もとの出願が2以上の発明を含むものでなければならず,2つ以上の発明を含むということは,単に特許請求の範囲に含まれている場合だけではなく,明細書に2以上の発明が含まれていればよいと解されていること,また,分割出願は,補正をなし得る期間内に出願されることが必要であること(特許法44条1項),さらに,分割出願はもとの特許出願の時にしたものとみなされ(同条2項),新規性・進歩性の判断等については分割出願の基になった特許出願時を基準とすることになることなどにかんがみると,出願の分割は補正(特許法17条)と類似した機能を持つものであるといえるから,分割出願をすることができる範囲についても,もとの出願について補正をすることが可能である範囲に限られるものと解すべきであって(補正の要件を欠く場合にも出願の分割をなし得るとすれば,実質的には分割手続により補正の要件を潜脱することを許すことになり,不合理である。),分割出願の明細書又は図面に,原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲外のものを含まないように解する…。

 

(6)東京地判平成16年(ワ)第14649号【電話の通話制御システム】事件<設樂裁判長>

*分割要件を補正後のクレームで判断した事例(補正の遡及効)~補正要件と同じ論理及び結論

=東京高判平成15年(行ケ)65、Cf.平成28年(行ケ)10114

<判旨抜粋>

…本件出願2第1補正及び第2補正は,顧客が預託金を支払う前に,特殊な交換部のメモリー手段に予め預託金額及び特殊コードを記憶させるという実施例の記載を追加し,「…」という本件出願当初明細書には記載されていない新たな作用効果を奏する発明を追加的に記載したものというべきである。したがって,本件出願2第1補正及び第2補正は,本件出願当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内において,本件分割出願における当初明細書の特許請求の範囲を増加し減少し又は変更した補正であるとは認められないから,本件分割出願は旧特許法44条1項の分割出願の要件を満たさないものであり,平成9年5月7日に出願されたものとみなされる。そして,本件出願2第1補正及び第2補正は,本件分割出願の当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものと認めることもできないため,特許法17条の2第3項に反する…。

 

(7)東京高判昭和50年(行ケ)第75号

*補正により分割要件違反が治癒される(補正の遡及効)

(参考)東京高判平成15年(行ケ)65「コンクリート埋設物事件」⇒子出願から分割した孫出願の出願日は,子出願が補正により分割要件を満たさなくなったときは、親出願日まで遡及しない。

⇒子出願の出願日は、手続補正書の提出日!!

<判旨抜粋>

本件特許出願は、その当初の明細書及び図面による限り、原特許出願との関係では、前記技術的事項に関する分割の要件を具備していないから、適法な分割出願であるということはできず、したがつて、出願日の遡及は認められず、現実の出願日である昭和三九年四月二三日に出願したものとして、取り扱われることとなる。

もっとも、本件特許出願に関し、その後の補正によつて、右分割の要件が満たされるに至つたときには、これにより改めて出願日の遡及が認められることとなる場合があるので、本件補正がこの場合に当るかどうかについて検討する。しかして、本件補正が、本件特許出願(分割出願であつて、新たな出願である。)それ自体との関係で、明細書又は図面の要旨を変更するものである場合には、その補正は許されず、本件補正によつて、本件特許出願が前記分割の要件を満たしたことにならないのはもとより、それが原特許出願の当初の明細書又は図面に記載されていた事項の範囲のものであると否とに拘らず、旧法の下において採用することができないのであり、新法の下でも却下されなければならない。…

本件補正は…本件特許出願の当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものでないことが認められる(なお、前掲各証拠によれば、右の点は、原特許出願の当初の明細書又は図面にも、記載されていないことが認められる。)。したがつて本件補正によつて、本件特許出願が前記分割の要件を満たすに至つたとすることはできない。

 

(8)東京地判平成27年(ワ)第8517号【畦塗り機】事件<嶋末裁判長>

*原出願⇒第1世代⇒第2世代⇒第3世代という経緯における第3世代の特許。

*第2世代の出願は取り下げられていたが、第1世代、原出願に出願日遡及できるかは争われなかった。

*東京高判平成15年(行ケ)65、大阪高判平成14年(ネ)2776~子出願が無効であること自体は関係ないとした。

<判旨抜粋>

【被告の主張】

請求項1における「前記連結片は,前記隣接する整畦板のうち,回転方向前側に位置する整畦板の整畦面の裏面に固定され,回転方向後側に位置する整畦板の整畦面に延在しない」との構成(本件補正によって付加された構成),及び「境界部分に沿って設けられた連結片」という構成は,いずれも,本件特許の原出願(特願2014-78397号)の分割(本件特許の出願)直前の明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,これらを併せて「原出願分割時明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものではない…。そうすると,本件特許に係る出願(特願2014-78397号の分割)は,適法な分割出願(特許法44条1項1号)ではなく,その出願日は原出願日に遡及しない。その結果,本件各発明は,本件特許の原出願(特願2014-78397号)に係る公開特許公報(平成26年7月10日に頒布された特開2014-128287号公報〔乙15〕)により新規性又は進歩性(特許法29条1項3号又は2項)を欠くこととなる。

…

【当裁判所の判断】

原出願分割時明細書等における記載中,「前記連結片は,前記隣接する整畦板のうち,回転方向前側に位置する整畦板の整畦面の裏面に固定され,回転方向後側に位置する整畦板の整畦面に延在しない」との構成に関係する…記載は,当初明細書等の…記載と同じであることが推認できるから…同構成は,原出願分割時明細書等の上記記載から自明な事項であるというべきである。また,「境界部分に沿って設けられた連結片」との構成についても,原出願分割時明細書…の記載から自明な事項であると認められる。…以上によれば,本件各発明についての特許は,適法な分割出願に係るものでないとは認められない…。

 

(9)知財高判平成28年(行ケ)第10263号【配線ボックス】事件(未来工業v.日動電工)<髙部裁判長>

*曾孫特許の分割要件の判断手法(一般)

<判旨抜粋>

分割出願が適法であるための実体的要件としては,①もとの出願の明細書又は図面に二以上の発明が包含されていたこと,②新たな出願に係る発明はもとの出願の明細書又は図面に記載された発明の一部であること,③新たな出願に係る発明は,もとの出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であることを要する。本件出願は,第1出願から数えて5世代目になる分割出願であるため,本件出願が第1出願の出願時にしたものとみなされるには,本件出願,第4出願,第3出願及び第2出願が,それぞれ,もとの出願との関係で,上記①ないし③の分割の要件を満たし,かつ,本件発明が第1出願の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内のものであること,という要件を満たさなければならない。

 

以 上

 

 

(原告)東日本高速道路株式会社

(被告)有限会社PXZ

 

執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュース令和8年2月2日の原稿を追記・修正したものです。)

監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

 

本件に関するお問い合わせ先: h_takaishi@nakapat.gr.jp

 

〒100-8355 東京都千代田区丸の内3-3-1新東京ビル6階

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