【商標/論稿】『商標としてのオノマトペー日本の現状と各国の状況』(AIPPI(2025)Vol.70 No.11、西村雅子)
1. 日本におけるオノマトペ商標の現状と識別力
日本語はオノマトペ(擬音語・擬態語)を多用する言語であり、食感を表す「もちもち」「サクサク」や、新語である「もふもふ」など、多数のオノマトペが商標登録されている。
識別力の判断においては、商品・役務の品質表示(記述的)となる場合は原則として登録が認められないが、そうでない場合は登録される。
裁判例・審決例の動向:
過去の事例として、指定商品「茶、コーヒー」等に対する「ササッと」について、東京高裁は「素早くできる」等の意味合いを看取させるとして識別力を否定した。
また、新語である「ぴえん」が、指定商品のアパレル商品について「残念な気持ち」等を表すものとして識別力が否定された事例がある。
識別力の判断において、広辞苑等の一般辞書だけでなく「オノマトペ辞典」等の専門辞典への掲載確認が必要である。
2. 各国・地域における状況
各国・地域の法律事務所等への照会結果によると、オノマトペ商標に関する特別な審査基準は存在せず、一般的な識別力の基準で判断される。
欧米(ドイツ・フランス・米国・カナダ): 米国やドイツでは、動物の鳴き声などが関連商品について登録されている事例(例:米国での犬のおもちゃに対する「BOW-WOW」、ドイツでの乳製品に対する「MUH」)が存在する。フランスでは「Miam」(おいしい)などが登録されているが、近年は厳格化の傾向にある。カナダでは、商品固有の音を表すオノマトペ(例:鐘に対する「DING-DING」)は記述的として拒絶される可能性が高い。
アジア(中国・香港・韓国・台湾): 中国では、指定商品との関連性が薄い場合は識別力が認められやすいが、食感などを直接表す場合は否定される。香港は比較的厳しく、路面電車の音「Ding Ding」が登録されたのは例外的である。韓国では、指定商品の性質を直感させる場合(例:掃除用具に「ポドゥクポドゥク(きれいに拭く音)」)は識別力が否定される。
3. 結論と提言
日本語はオノマトペが豊富であるため商標採択も多いが、諸外国では必ずしもそうではなく、問題となっていない。
オノマトペ商標の採択において、登録可能性だけでなく需要者に好印象を与えるかという観点も重要であり、今後、言語学と商標の実務を架橋する「商標言語学」の研究が必要である。
https://www.aippi.or.jp/info/view/515
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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