◆判決本文
1.引用商標の周知性について
引用標章「地球グミ」の語は、グミキャンディ「Trolli」「Planet Gummi」又は「Blue Planet」(「原告商品」)又はその包装若しくは個包装には記載されていない。もっとも、原告商品は、①動画投稿者及びその閲覧者を中心に、平成30年頃、韓国で大流行し、令和2年頃から、日本でも大流行し、②遅くとも原告が輸入販売を開始した同年10月までには、全国に店舗を展開する小売業者により「地球グミ」と称して宣伝され始め、③原告の輸入販売開始以来、即時完売が相次ぐ入手が極めて困難な大人気の商品となり、全国に店舗を展開する小売業者らにより「地球グミ」と称して繰り返して宣伝され、動画投稿サイトでも「地球グミ」として大人気を博し、④大人気の「地球グミ」として、令和3年6月、全国紙により新聞報道され、また、在阪の準キー局によりZ世代にはやりの飲食物としてテレビ報道され、さらに、同年7月、在京のキー局により若者が皆知っていることとしてテレビ報道され、⑤原告により、遅くとも同年6月にはテレビ番組で、また、遅くとも同年9月には宣伝で、「地球グミ」と称され、⑥同年11月、動画投稿契機の人気商品等の例として紹介され、渋谷109の運営会社による若い女性への調査結果で「トレンド大賞」の「カフェ・グルメ部門」に入賞し、⑦令和4年1月、「現代用語の基礎知識」にて、令和3年中の食に係るヒット商品として原告商品の俗称たる「地球グミ」の語が取り上げられた。以上の事情に照らすと、引用標章「地球グミ」の語は、遅くとも本件商標登録の査定日である令和4年2月22日までには、日本の輸入販売業者である原告又は外国の製造業者の業務に係る原告商品を表示するものとして、需要者である若者を始めとするグミキャンディの消費者の間に広く認識されるに至っていたものと認められる。
1.判決要旨1は、商標の不登録事由に係る商標法4条1項10号所定の「他人の業務に係る商品・・・を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標・・・であって、その商品・・・について使用するもの」について、①同業団体や製造業者・販売業者等の企業グループが「他人」に該当すること又はその余地を肯定する裁判例(知財高判平成29年7月19日判タ1444号229頁〔南三陸キラキラ丼事件〕、東京高判平成14年12月25日判時1817号135頁〔麗姿事件〕等。不正競争防止法2条1項1号所定の「他人の商品等表示・・・として需要者の間に広く認識されているもの」に係る同旨の最判昭和59年5月29日民集38巻7号920頁〔アメリカンフットボール事件〕も参照)及び②周知性の獲得は第三者の使用によるものでも足りるとする裁判例(東京高判平成4年2月26日知財集24巻1号182頁〔コンピューターワールド〕等。不正競争防止法2条1項1号所定の「他人の商品等表示・・・として需要者の間に広く認識されているもの」に係る同旨の最判平成5年12月16日裁判集民170号775頁〔アメックス事件〕も参照)を前提に、下記のように原告商品の正式名称「Trolli」「Planet Gummi」又は「Blue Planet」ではない俗称「地球グミ」に係る比較的短期間(2年間弱)の使用による周知性の獲得を特に需要者である若者を始めとするグミキャンディの消費者の間での大流行・大人気・はやり・ヒット等を基礎付ける事情により肯認したものと理解される。
【https://www.yutaka-trd.co.jp/processedfood/trolliより引用】
また、他の商標の不登録事由に係る商標法4条1項19号所定の「不正の利益を得る目的」との関係において、本件商標権者である被告が下記のようなグミキャンディ「EARTH GUMMY」(アースグミ)を原告商品の後発品として製造販売し始めたことが原告により主張立証されたことも、判決要旨1に実質的に影響したものと推測される。
【https://ssbjapan.com/category-confectionery.html#gummie_earthより引用】
1.引用商標の周知性について
「原告商品は、外国の会社が製造する菓子であり、その名称を『Trolli Planet Gummi』、『Planet Gummi』などとするものであって、原告商品又はその包装若しくは個包装には、日本語からなる『地球グミ』との文字は記載されていない。しかしながら、原告商品は、平成30年頃、動画投稿者及びその閲覧者を中心に韓国において大流行したところ、この流行が日本にも飛び火し、原告商品は、令和2年頃からは、日本においても、動画投稿者及びその閲覧者を中心に大流行し、遅くとも原告が原告商品の輸入販売を開始した同年10月までには、全国に店舗を展開する小売業者の中に、原告商品を『地球グミ』と称してこれを宣伝する者が現れるようになった。原告が原告商品の輸入販売を開始した後についてみても、原告商品は、大人気を誇り、小売業者の店舗における販売開始後すぐに完売となるという事態が相次ぎ、その入手が極めて困難な商品となった。原告が原告商品の輸入販売を開始して以来、全国に店舗を展開する小売業者らは、原告商品を『地球グミ』と称してこれを繰り返し宣伝し、また、原告商品は、動画投稿サイトにおいても、『地球グミ』と称する商品として大人気を博していた。そのような原告商品は、令和3年6月、『地球グミ』と称する大人気商品として、全国紙による新聞報道及び在阪の準キー局によるテレビ報道がされるまでに至り、同テレビ報道においては、同年上半期にはやった飲食物としてZ世代が選ぶランキングにランクインした。原告商品は、翌7月、同様の人気商品として、在京のキー局によるテレビ報道がされるに至り、20代前半の若者が皆知っていることとして紹介された(なお、原告は、遅くとも同年6月には、テレビ番組において、原告商品を「地球グミ」と称しており、また、遅くとも同年9月には、原告商品を『地球グミ』と称する宣伝をするようになった。)。さらに、『地球グミ』と称する原告商品は、同年11月、動画投稿サイトへの投稿がきっかけで人気となった作品又は商品の例として、著名作家の小説、有名シンガーソングライターの楽曲等と並べて紹介されるとともに、渋谷区にある著名な商業施設の運営会社による調査(15歳から24歳までの女性545名を対象としたもの)の結果である『SHIBUYA109lab.トレンド大賞2021』なる賞においても、その『カフェ・グルメ部門』の2位に入賞した。このような『地球グミ』と称する原告商品の令和3年までの動向を踏まえ、令和4年1月に発行された『現代用語の基礎知識2022』においては、令和3年中に注目された物(食に係るヒット商品)として、原告商品の俗称たる『地球グミ』の語が取り上げられるに至った。
以上の事情に照らすと、『地球グミ』の語(引用標章1)は、遅くとも本件査定日(令和4年2月22日)までには、原告又は原告商品の製造業者の業務に係る商品(原告商品)を表示するものとして、需要者(引用標章1が使用される商品の内容及び性質並びに前記1の事実に照らすと、若者を始めとするグミキャンディの消費者であると認められる。)の間に広く認識されている商標に該当していたものと認めるのが相当である。」
【Keywords】地球グミ、豊産業株式会社、MEDERER、Trolli、Planet Gummi、Blue Planet、商標法4条1項10号、使用による周知性の獲得、株式会社エス・エス・ビー、EARTH GUMMY、アースグミ
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。
文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)
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