Q60 意匠権と並行輸入
(1)並行輸入の適法性が判断された意匠権の裁判例はありませんが、特許権と同様に考えられますから、BBS最判が妥当し、「我が国の意匠権者又はこれと同視し得る者が国外において意匠製品を譲渡した場合」は、意匠権者は、原則として、並行輸入業者に対する特許権・意匠権の権利行使は出来ません。
(2)意匠権者が国外で意匠製品を譲渡した場合、意匠権者自身は原則として意匠権を行使できなくなりますが、専用実施権者も専用実施権を行使することができないかは別問題です。この点、裁判例が存在せず、学説も割れている状況ですが、専用実施権を行使することができると考える学説が多数です。もっとも、否定説も有力ですから、専用実施権設定契約において、意匠権者との間で日本を販売先ないし使用地域から除外することを合意するとともに、その旨を意匠製品に明確に表示する義務を負わせることが望ましいでしょう。
(3)フレッドペリー最判の第1ないし3要件を全て満たすため、B社の並行輸入は商標法上適法であり、B社の販売行為を差し止めることは出来ません。なお、設問(3)で問題となっている商標法上の並行輸入の適法性については、黙示の「授権」論ではなく、商標機能論を理由としているため、意匠権(特許権)上の並行輸入の適法性が問題となっている設問(2)とパラレルではありません。それ故、商標権者が商標権を行使できなくても専用使用権者は専用使用権を行使することができるか否かという論点はありません。もっとも、商標権者が日本向けの販売をしないこと(販売地域条項)を契約内容としておくことが望ましいでしょう。
キーワード:並行輸入、専用実施権、BBS最高裁判決、二重の利得、特許権者、フレッドペリー最高裁判決、商標機能論、専用使用権、販売地域条項
http://www.seirin.co.jp/book/01805.html
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)