[注:成立前の法律案です。正式には、法律成立後に改めて情報提供致します。]
1 制度の概要
種苗法は、品種登録制度を定める法律です。品種登録制度は、植物の新品種を育成した者(育成者)に対して、当該品種についての独占的排他権を付与することによって、当該育成者が育種に要した費用等を回収することを可能にし、さらなる新品種の育成に対する意欲を高め、農林水産業の発展をはかる制度です。
2 法改正の背景
近年、日本の優良品種が海外に流出し、他国で増産され第三国に輸出される等、憂慮する事態が生じたこと、また、これまで育成者権が第三者に侵害されても立証が困難等、育成者権の活用しづらさが顕在化していること等から、育成者権を活用しやすい権利とするため、見直しが図られました。
3 主な改正点
主な改正点は、以下のとおりです。
(1)育成者権者の意思に応じて、利用条件を設定し権利侵害に対応できるようにするための措置等
登録品種について、育成者権者が利用条件(国内利用限定、国内栽培地域限定)を出願時に付することができるようになりました。この利用条件に反して、①海外への持ち出しや、②国内指定地域外での栽培を行った場合、育成者権侵害となります。
輸出・栽培地域に係る制限の内容は、農水省のウェブサイトで公表し、また、登録品種自体にも①登録品種である旨及び②制限がある旨の表示が義務付けられます。
(2)許諾に基づく自家増殖
改正前は、登録品種の収穫物の一部を農業者が次期収穫物の生産のために当該登録品種の種苗として用いる自家増殖のために、育成者権者の許諾は不要でした。しかし、法改正により、自家増殖にも育成者の権利が及び、育成者権者の許諾に基づき行うこととされました。
(3)育成者権を活用しやすくするための措置
育成者権が第三者に侵害された場合の立証の負担を軽減するため、品種登録簿に記載された特性(特性表)と被疑侵害品種の特性を比較することで両者の特性が同一であることを推定する制度が設けられます。
また、育成者が特性表の補正を請求できる制度及び裁判での証拠等に活用できるよう育成者権が及ぶ品種か否かを農林水産大臣が判定する制度が設けられます。
施行期日(予定)は、基本的に令和3年4月1日施行ですが、規定により段階的であるため、下記の農水省HPの資料をご参照ください。
https://www.maff.go.jp/j/law/bill/201/attach/pdf/index-38.pdf
執筆 弁護士・弁理士 外村玲子
監修 弁護士・弁理士 飯田 圭