東京地判平成30年(ワ)28931【レーザ加工装置】<柴田>
*被疑侵害者が、原告製品(SD装置)の一部に相当する製品(SDエンジン)を製造販売していた。
⇒102条2項適用なし
⇒102条1項適用あり
★必ず1項も選択的主張すべし
*102条1項と3項との重畳適用を一般的に否定した!?
(判旨抜粋)
⑵ 特許法102条2項の適用について
特許法102条2項…の推定は、侵害者による特許権侵害行為がなかった場合に、侵害者が特許権侵害行為により受けた利益やそれと同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係があることを前提としているといえる。そうすると、侵害者による特許権侵害行為がなかったとしても、侵害者が特許権侵害行為により受けた利益と同質といえる利益を特許権者が獲得し得るという関係が類型的にない場合には、同条適用の基礎を欠くといえる。
本件において、原告は、SDエンジン…を製造、販売しているが、SD装置を製造、販売することはしておらず、SDエンジンはSD装置の一部品であって、SDエンジンの需要者は半導体製造装置の製造業者であるのに対し、SD装置の需要者は半導体の製造業者である…。原告は、本件各発明の実施品であるSD装置の製等に使用される部品に相当するSDエンジンを製造、販売等するにすぎず、SD装置を販売等していない。そうすると、被告による特許権侵害行為がなかった場合に、原告が、被告に代わってSDエンジンを搭載した装置であるSD装置を販売できたわけではない。本件で被告の利益は被告がSD装置を販売したことにより得た利益であり、被告による本件特許権の侵害行為がなかったとしても、原告がそのようなSD装置を販売等することによる利益と同質の利益を得ることができたとは認められないから、被告が特許権侵害行為により受けた利益について、類型的に原告が獲得し得るという関係がない。そうすると、本件においては特許法102条2項の適用の基礎を欠く。…
⑶ 特許法102条1項の適用について
特許法102条1項における、特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者の製品であれば足りるところ、特許権者である原告はSDエンジンである原告エンジンを販売している。そして、SD装置にはSDエンジンは必要なものであったといえるのであるから、被告によるSD装置の販売により原告エンジンの販売数量が影響を受ける。したがって、本件には、特許法102条1項を適用する基礎があるといえる。…
…特許法102条1項は、同項各号を含めた同項全体によって特許権者の損害額を推定するものであり、同項に加えて同条3項が適用されるものではない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/821/092821_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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