東京地判平成30年(ワ)1130【印刷された再帰反射シート】<田中>
*数値範囲外と比較した例が示されていなかったが、サポート要件〇。
(控訴審判決・令和3年(ネ)第10084号<宮坂>もサポート要件○)
明細書中の「0.15㎟以上であれば,成形性に優れ…,30㎟以下であれば…層間密着強度を低下させ…ないので好ましい」という記載が貢献した!!
(判旨抜粋)
段落【0030】には,「独立印刷領域の面積が0.15㎟以上であれば,成形性に優れ,且つ色相の調整が容易であるので好ましく,30㎟以下であれば,印刷周囲における印刷層⑵を挟む2層の層間密着強度を低下させることがないので好ましい」と記載されている。このような本件明細書の記載に接した当業者であれば,再帰反射シートの色相を改善ないし調整するための印刷層の面積が小さすぎると,色相の調整という効果が享受できないから,ある程度の大きさが必要であると理解でき,また,密着性に劣る印刷層の面積が大きすぎると,層間密着強度が低下するため,ある程度小さい印刷層である必要があると理解できるから,本件明細書に印刷領域の面積が0.15㎟未満や30㎟超えの場合と比較した例が示されていなくとも,本件発明の技術的意義を理解できる…。
控訴審判決・令和3年(ネ)第10084号<宮坂>も、サポート要件○
「本件発明の課題は、三角錐型キューブコーナー再帰反射シートや蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シート等で色相を改善するために連続した印刷層を設けた場合における耐候性や耐水性に劣るという従来技術における欠点を、非常に簡単で安価な方法で解決し、色相の改善された再帰反射シートを提供するものであるといえる。印刷領域を連続させるか独立させるかの違い以外の条件が上記課題の解決に影響を及ぼし得ることは否定できないものの、そうした条件と影響を網羅することまでサポート要件の要求するところではない。当業者であれば、本件特許の特許請求の範囲と明細書の記載とを対比し、上記課題の解決に資する発明として本件発明が記載されていると認識できるものと解される。」
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/776/090776_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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