東京地判平成29年(ワ)39602「加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置」事件<柴田裁判長>
*明細書に記載されたメカニズムが現実に起こらない。
⇒クレーム文言である「熱気流の上部」の位置を特定不可能(存在しない)
⇒実施可能要件×
…
※実質的には、発明未完成or不存在という事案を、実施可能要件違反で対応する一つの典型例!!
【請求項1】(天井の排気ダクトに接続された吸気部の)吸引端は,前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされている…加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置
(判旨抜粋)
…物の発明については,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき,当業者がその物を作ることができ,かつ,その物を使用することができる必要があるといえる。…本件訂正発明1-1についてみると,構成要件1-1Eは「吸引端は,前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされている」とするから,本件各発明を実施するためには,排気装置の生産,使用に当たり,その吸引端をこの「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」とする必要があり,熱気流の上部を検知できなければならない。…
被告は,熱気流の上部を特定することができず,本件訂正発明1が実施可能要件に違反すると主張する。…
炭火コンロにおける煙の立ち上り方等についてみると,加熱調理部である炭火コンロから発生する煙の様子を通常のカメラで撮影した動画…によれば,加熱調理部から発生した煙は,いずれも上方に行くにしたがって徐々に拡散しており,加熱調理部の上方のいずれかの位置において,本件図に示された本件三角形状のように収束する様子は見られない。…これらによれば,本件各発明を実施しようとする者が,煙の動きを観察したとしても「熱気流の上部」の位置を特定することができるとは認められないというべきである。…加熱調理部から立ち上る熱気流の全体やその熱気流の上部を検知することはできない。…
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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