東京地判令和4年(ワ)22517<杉田>
【トイレットロール(第1特許)】
*ダブルエンボスである被告製品は、「表面と裏面にそれぞれ付されたエンボスが重なるとは限らず、エンボスの周縁が一致することが保証されていない」から、エンボスの周縁を特定できず、エンボスの深さも確定できないとされた。
⇒非充足
【ロール製品パッケージ(第2特許)】
*均等論第三要件(製造当初の置換想到性)及び第五要件のみを否定した!!
「被告製品…においては、スリットは、その中央部分のみが上方に対して弧状であり、本件発明2の構成とは基本的な形状が異なる…」
(判旨抜粋)
<構成要件>1B 前記エンボスのエンボス深さが0.05~0.40mm
仮にエンボスの形状が略正方形であるとしても、本件明細書1でいう最長部aが、その横方向の辺の長さとなるとは必ずしもいえず…、原告測定方法におけるエンボスの深さを測定するための測定断面曲線の取得位置は、本件明細書1で示された位置であるとは必ずしもいえない。…各被告製品のワンショット画像…は…、各被告製品のエンボスは、エンボス周縁の位置が明確に特定できるようなものではない。…各被告製品においては、本件発明1が前提とするようなエンボスの周縁frが認められるとは必ずしもいえない。…
トイレットロールにおけるエンボスであるという性質上、各エンボスの形状については一定のばらつきがあることが想定されているといえる。もっとも、本件発明1のエンボス深さDは、X-Y平面上のエンボスの高さプロファイルを得ることができ…、エンボスの周縁frやその最長部aがどこに位置するのかを特定できるトイレットロールについて、【図5】 (b)、【図6】のような断面曲線を得た上で、測定されたものであり、そのようにして測定されたものであるエンボス深さDが一定の数値のトイレットロールについて本件発明1の効果を奏するとしているものといえる。各被告製品は、各シートのエンボスの凹凸の位置関係を特に調整しないまま、プライボンディングした通常の2プライのダブルエンボスである…。このようなダブルエンボスのトイレットロールにおいては、表面と裏面にそれぞれ付されたエンボスが重なるとは限らず、エンボスの周縁が一致することが保証されていないことから、エンボスの周縁が明確にならず、また、エンボスの凹凸の位置がずれることにより干渉し、その形状が明瞭でないエンボスが生じ得る。そして、甲51報告書によれば、各被告製品については、原告がエンボスとして 特定した部分の中央に、断面曲線で上に凸の曲率極大点が認められるなど、そのエンボスが本件発明1のエンボス深さDを測定する際に想定されていた凹部形状のものであるかが必ずしも明らかではないほか、X-Y平面上のエンボスの高さプロファイルによって、エンボスの周縁frやその最長部aがどこに位置するのかを確定できるものとは必ずしもいえない。そうすると、そのようなエンボスが付された各被告製品のトイレットロールについてエンボスを10個選んで測定を行い、それらの平均値として一定の深さDを求めたとしても、本件発明1におけるエンボス深さDが測定できたということはできない。
093308_hanrei.pdf (courts.go.jp)
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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