東京地判令和2年(ワ)8642【PCSK9】
(特許権者の主張)
出願日当時にEGFaミミック抗体を取得できなかったが、出願時に存在しなかった課題の解決手段を提供することまでは求められていない。
(判決)
「将来解決すべき…課題解決手段の構成」が明細書に開示ないから、サポート要件・実施可能要件違反
※出願日当時に知られていなかったが特許請求の範囲に属するものが出願日後に分かった場合も、サポート要件・実施可能要件が問題となる。
⇒不可避的問題であるが、除くクレームで対応可能か?
(本判決は未公開であるため不明であるが、侵害訴訟であることから、被告製品が「EGFaミミック抗体」であったのかもしれない。)
※不可思議なことに、均等論では、出願日後に知られた物に対し均等侵害を主張可能であり、そのときに、第4要件はあるものの、均等物に対するサポート要件・実施可能要件が問われない。
筆者はこの点を疑問に思っているが、本判決はその矛盾が顕在化したと考える。すなわち、元々のクレーム文言が「EGFaミミック抗体」を含まなければ、「EGFaミミック抗体」に対し均等論を主張する余地があるのに、含んでいるとサポート要件・実施可能要件違反になってしまう。
(今から除くクレームで減縮しても、第5要件で均等論は×なのか。それとも、サポート要件・実施可能要件違反を免れるための減縮では均等論が認められた事案も多く、ワンチャンあるのか?)
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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