大阪地判平成29年(ワ)7384【マッサージ機】<損害論>
<損害論>102条2項の推定覆滅~98%覆滅(発明2)、85%覆滅(発明3)
請求55億円,認容約27.8億円
<推定覆滅事由>
①本件発明Ⅱ及びⅢの貢献の程度がわずかであり、同被告製品の大部分は、本件発明Ⅱの特徴とは別の機能等が誘因となって購入された。
②シェア第2位を占めるパナソニック製の競合品が多数存在する。
(※本件発明Ⅱと本件発明Ⅲとで推定覆滅された率は異なるが、判決上のあてはめ文言は概ね同じ。)
(判旨抜粋)
対象被告製品のうち本件発明Ⅱに係るものは、本件発明Ⅱの貢献の程度がわずかであり、同被告製品の大部分は、本件発明Ⅱの特徴とは別の機能等が誘因となって購入されたものと認められる。これに加え、マッサージチェアのシェア第2位を占めるパナソニック製の競合品が多数存在すること、その他の事情を考慮すると、被告が得た利益と原告が受けた損害との因果関係を大きく阻害する事情があるといえ、被告が得た利益の98%についてその推定が覆滅されるとするのが相当である。
また、対象被告製品のうち本件特許Ⅲに係るものは、本件発明Ⅲの貢献の程度は限定的であるといえること、前記パナソニック製の競合品が多数存在すること、その他の事情を考慮すると、被告が得た利益と原告が受けた損害との因果関係を相当程度阻害する事情があるといえ、被告が得た利益の85%についてその推定が覆滅されるとするのが相当である。
なお、対象被告製品のうち本件特許Ⅱ及びⅢに係るものは、本件特許Ⅲに係るものと同様に、被告が得た利益の85%についてその推定が覆滅されるとするのが相当である。
<推定覆滅部分についての102条3項の適用>
特許法102条2項による推定の覆滅が肯定され、これにより侵害者の利益の額により推定された特許権者等の実施利益の減少による逸失利益の額がそのまま損害として認めることができないとしても、当該部分について侵害者により無許諾で実施されたことに違いはない以上、当該部分に係る損害評価が尽くされたとはいえず、特許権者等は、侵害者から得べかりし実施料の喪失という損害の賠償を求めることができると解するのが相当である。したがって、特許法102条2項による推定が覆滅された部分について同条3項に基づく損害を請求することができると解するのが相当である。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/463/091463_option1.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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