大阪地判平成23年(ワ)6878【着色漆喰組成物の着色安定化方法】
<損害論>102条2項
認容額2678万
<推定覆滅事由>60%
①競業他者の存在
②本件発明以外の特長~被告カタログは,本件発明の含有成分やそれに伴う着色の均一性や安定性,色むら防止等を特徴として挙げていない
<推定覆滅事由>
本件発明は,着色漆喰組成物の着色を均一かつ安定的にし,当該漆喰組成物の使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むらを防止するという作用効果を有する。これは,塗壁材としての用途を有する着色漆喰組成物にとって,その有用性を高め,商品価値に直結するものであり,被告製品の販売による利益に寄与している。
しかし,本件特許発明1は,物の発明でも,物を生産する発明の方法でもなく,単純方法の発明であるから,物の販売による利益への寄与度については,低く評価せざるを得ない。
本件発明以外の特長~被告製品を紹介するウェブサイト及びカタログは,本件発明で特定されている含有成分やそれに伴う着色の均一性や安定性,製品使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むら防止等の作用効果を被告製品の特徴として挙げていなかった。むしろ,それらウェブサイトやカタログは,被告製品につき,漆喰が有する調湿機能などを基本としつつ,酸化チタンを配合することによる防臭機能や,銀イオンを含有することによる抗菌機能などを特徴として強調しており,この点が現に一定の需要を喚起したこともうかがわれる。
競業他者の存在
(判旨抜粋)
<覆滅事由>
特許法102条2項により,特許権(あるいは独占的通常実施権)を侵害した者がその侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額が損害額と推定されるが,特許発明の実施が当該利益に寄与した度合によっては,上記損害額の推定の一部が覆滅されるものと解される。
この点,前記イでも論じたとおり,本件特許発明1は,着色漆喰組成物の着色を均一かつ安定的にし,当該漆喰組成物の使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むらを防止するという作用効果を有する。これは,塗壁材としての用途を有する着色漆喰組成物にとって,その有用性を高め,商品価値に直結するものであり,被告製品1の販売による利益に寄与していることは確かである。
しかし,本件特許発明1は,物の発明でも,物を生産する発明の方法でもなく,単純方法の発明であるから,物の販売による利益への寄与度については,低く評価せざるを得ない。
また,被告製品1を紹介するウェブサイト(甲25)及びカタログ(甲26)は,本件特許発明1で特定されている含有成分やそれに伴う着色の均一性や安定性,製品使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むら防止といった作用効果を,被告製品1の特徴として挙げていなかった。むしろ,それらウェブサイトやカタログは,被告製品1につき,漆喰が有する調湿機能などを基本としつつ,酸化チタンを配合することによる防臭機能や,銀イオンを含有することによる抗菌機能などを特徴として強調しており,この点が現に一定の需要を喚起したこともうかがわれる(乙50~2)。
以上の事情に加え,競業他者の存在(甲33,乙12,13)も考慮し,60%の範囲で,特許法102条2項の推定が覆滅されると認めるのが相当である。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/546/083546_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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