大阪地判令和4年(ワ)9521【熱可塑性樹脂組成物】
*四捨五入が認められず非充足。均等も×
<四捨五入論>
「有効成分は…小数点以下あるいは整数値でも10の位、100の位とするかは、分野や使用目的によってまちまちである…。…被告UVAは、分子量が699.91848であって…分子量が700以上…はない…。」
<均等論>
数値限定発明…数値に設定することに意義がある発明は、その数値の範囲内の技術に限定することで、その発明に対して特許が付与されたと考えられるから、特段の事情のない限り、その数値による技術的範囲の限定は特許発明の本質的部分に当たる ⇒均等×
(判旨抜粋)
<四捨五入論>
…原告は、被告UVAと同じ分子式で表されるUVAについて、カタログや他の特許公報等において、その分子量が700と表記されることがあること…を指摘するものの、「699.9」とか、「699.92」とかと表記される例もある…ことからすると、当業者において、UVAの分子量を、算出された分子量を丸めて整数値とすることが技術常識であると認めることもできない(原告自身、有効数字は整数値をとるか、小数点以下あるいは整数値でも10の位、100の位とするかは、分野や使用目的によってまちまちであることは自認している。)。…以上によると、被告UVAは、分子量が699.91848であって、構成要件1B及び同6Bの「分子量が700以上」であるUVAではない…。
<均等論>
…本件各発明の本質的部分は、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する、分子量が700以上のUVAが、主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル樹脂と相溶性を有することを見出したことにより、110℃以上という高い優れた耐熱性や高温成形時における発泡及びブリードアウトの抑制、UVAの蒸散による問題発生の減少という効果を有する樹脂組成物を提供することを可能にした点にあると認められる。…数値をもって技術的範囲を限定し(数値限定発明)、その数値に設定することに意義がある発明は、その数値の範囲内の技術に限定することで、その発明に対して特許が付与されたと考えられるから、特段の事情のない限り、その数値による技術的範囲の限定は特許発明の本質的部分に当たると解すべきである。上記検討によれば、分子量を「700以上」とすることには技術的意義があるといえるうえ、本件において、上記特段の事情は何らうかがえない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/802/092802_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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