第1 概要
令和5年4月1日、同日以降に審査請求がされた審査着手前の分割出願の一部について、出願人又は代理人による申請に基づき、原出願の前置審査又は審判の結果が判明するまでの間、審査を中止する運用が特許庁において開始されました。
詳細は、以下に記載する特許庁のHPをご確認ください。
原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
第2 背景
分割出願のうち、原出願の拒絶査定後、拒絶査定不服審判請求にあわせて出願されたものについては、(1)原出願の前置審査又は審判の結果を踏まえて当該分割出願の審査をする方が便宜である場合があり、また、(2)出願人にとって、原出願の拒絶査定不服審判の結果を踏まえて分割出願の対応を検討できることは、より効率的かつ効果的な出願戦略の構築につながる、ことから、上記運用が開始されました。
第3 運用の具体的な内容
1 審査中止の対象となる分割出願
令和5年4月1日以降に審査請求がされた審査着手前の分割出願であって、以下の(1)~(3)の全ての要件を満たす分割出願が、審査中止の対象となり得ます。
2 審査中止の申請に必要な手続
出願人又は代理人は、対象となる分割出願の審査請求日から起算して5開庁日以内に、以下の(1)及び(2)の両方の手続を行う必要があります。
上申書及び送信用フォームには、1で述べた審査中止の対象となる分割出願の要件を充足していることに加え、当該分割出願の出願日や審査請求日、原出願番号や審判番号、原出願の拒絶査定日といった情報の記載・記入が必要になります。
上申書の記載例及び送信用フォームのリンクは、上記特許庁のHPに掲載されています。
3 申請後の流れ
(1)特許庁は、出願人又は代理人からの申請に基づいて、審査中止の運用の適用対象となるかどうかを判断します。
判断結果は出願人又は代理人に対してメールで通知されるとともに、応対記録が作成されます。
(2)審査中止の適用対象となった場合、原出願において以下のア~ウのいずれかがなされてから3か月後まで当該分割出願の審査が中止されます。
ア 前置審査において出願人に特許査定の謄本が送達される
イ 拒絶査定不服審判において出願人に最初の審決の謄本が送達される
ウ 審判請求が取下や却下となる
(3)審査中止の期間が終了する場合、特許庁から、出願人又は代理人に対して、その旨がメールで通知されるとともに、応対記録が作成されます。
(4)審査中止の終了後、当該分割出願は、上記ア~ウのいずれかの契機から起算して通常の出願と同様の審査順番待ち期間を経たうえで、審査に着手されます。
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。
文責:弁護士・弁理士 佐竹 勝一(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:s_satake@nakapat.gr.jp