令和5年行ケ)10085【画像形成装置】<宮坂>
*特許出願に係る分割手続の瑕疵が看過されたとしても、これを治癒するために、明瞭でない記載の釈明として「訂正」することは出来ない。
補正・分割の瑕疵が看過されて登録されると、取り返しがつかなくなる!!
補正要件違反が看過された登録されたため、分割ツリーが途切れてしまった事例もある。(大阪高判平成14年(ネ)2776<若林>、東京高判平成15年(行ケ)65<篠原>)
チャレンジの補正・分割は、セーフ兄弟分割出願とセットで!!
(判旨抜粋)
『原告らは、本件特許出願には分割出願手続上の瑕疵があることから、これを治癒するための訂正は同項3号の明瞭でない記載の釈明に該当する旨主張する。この主張は、①本件設定登録時明細書等の記載は、原出願当初明細書等の記載の範囲内であるものの、本件特許出願時までに補正されていた分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内のものではなかった、②その結果、分割出願としての要件を満たしていないことになるが、拒絶理由通知による注意喚起もなされないまま特許査定されてしまい、本件特許は瑕疵を帯びるものとなった、③本件判断対象訂正事項の実質的な内容は、本件明細書等の記載を原出願当初明細書等に相当する記載内容からその後補正された分割直前の明細書等に相当する記載内容へと訂正することで、上記瑕疵を解消しようというものである、というものと解される。しかし、特許法126条1項にいう「願書に添付した明細書」又は「図面」は、訂正審判請求時の特許明細書及び図面と解すべきであり、したがって、同項2号、3号に規定する訂正の目的の要件を満たすか否かについては、訂正審判請求時の明細書等と訂正後の明細書等とを対比して判断すべきであって、このことは同項の条文の文言からも、その趣旨(上記(2))からも明らかである。そして、本件において上記①~③の事情が認められるとしても、分割直前の出願明細書等と本件設定登録時明細書等の関係における分割手続の瑕疵は、同法44条の適用における問題であり、それ自体は訂正の対象である本件設定登録時明細書等自体に明瞭でない記載(同法126条1項3号)があることを意味するものではないし、同項2号にいう誤記又は誤訳に当たるものでもない。本件特許出願に係る分割手続の瑕疵が看過されたという事情が仮に認められるとしても、原告らの主張は、明細書等の訂正の名の下に分割出願のやり直しを求めるに等しいものといわざるを得ないところ、これを正当化する根拠を見いだすことはできない。』
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/813/092813_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)