令和5年(行ケ)10057【噴射製品】<本多>
優先権1明細書の請求項に記載があったが実施例は無かった化合物につき、優先権2出願時に実施例追加した。
⇒優先権1の優先権主張OK
優先権1明細書中に、明細書1の実施例記載の別の化合物とメカニズムが共通する旨の説明があった。
※人工乳首事件は優先期間中に他人の出願があった事案であったが、これが他人の公然実施や公開であったならば、ブリリアンリング事件と同じく、部分優先の問題となっただろう。
※米国でも、Ian Frazer v. Richard Schlegel (CAFC, 2007.8.20)は、実施例追加したパリ優先権主張出願に係る発明について、優先期間内の他人の出願があったが、優先権の効果を認め、先発明者としての地位を認めた。(パテント2024 Vol.77 No.7 P153)
(判旨抜粋)
…優先権出願1の明細書等において、実施例として記載されているのは、害虫忌避成分としてEBAAPを含む噴射製品のみであり、害虫忌避成分としてイカリジンを含む噴射製品に係る実施例は、優先権出願2の明細書等…により追加されたものであるが、当該実施例は、本件訂正発明1の実施に係る具体例であるとともに、優先権出願1の特許請求の範囲の請求項1又は2に発明特定事項が記載されていた発明の実施に係る具体例を確認的に記載したものと理解できるから、優先権出願1の明細書等に記載された技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。…
優先権出願1の明細書等には、本件訂正発明1に関する背景技術、課題、解決手段に加えて、発明の効果に関するメカニズムや各構成要件 の技術的意義が記載されており、これらはEBAAP、p-メンタン-3,8-ジオール及びイカリジンに共通して適用されることも把握できるものといえる。すなわち、優先権出願1の明細書等には、本件訂正発明1について、害虫忌避成分をイカリジンとする部分を含めて、その技術内容が、当該の技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていると認められる。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/886/092886_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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