令和5年(行ケ)10020【鋼管杭式桟橋】<本多>
*明細書中には特定の条件の実施例のみが記載されていたが、本件発明の解決課題から、「当業者は…他の条件を加味した上で、適宜上記技術的思想を取り入れ、本件各発明の課題を解決することが可能である」とした。
⇒サポート要件○
*特定の場所を局所的に高強度にする容易想到性を否定した。
⇒進歩性○
(判旨抜粋)
<サポート要件○>
被告は、本件明細書には特定の条件下(鋼管杭列の数、水深、地盤構造、鋼管杭の板厚、直径)での地震応答解析(シミュレーション)で確かめられたことが記載されるにとどまり、別の条件下においても曲率φpの数値範囲とすることで課題が解決できるとは理解できない旨主張するが、もとより鋼管杭式桟橋が設置される地盤等は様々であって、その性能照査は状況に応じた適切な方法によらねばならないものであるが、本件明細書が開示しているのは、鋼管杭のうち少なくとも陸側に対面して配置された地中部における発生曲率が大きい部分にのみ、局所的に特定の数値以上の変形性能を有する鋼管杭を用いるという技術的思想であって、これに触れた当業者は、現実に地震応答解析等の性能照査を行う場合、他の条件を加味した上で、適宜上記技術的思想を取り入れ、本件各発明の課題を解決することが可能であるから、特定の条件下での結果のみが記載されていることのみをもって、本件各発明がサポート要件を満たさないとする理由とはならない…。
<進歩性要件○>
(相違点3A)本件発明3の「鋼管杭」が「前記鋼管杭列を構成する鋼管杭の一部であって、外力に対して鋼管杭に生じる曲率が大きい少なくとも陸側に対面して配置された鋼管杭の地中部における発生曲率が大きい部分を、前記鋼管杭の直径Dと前記鋼管杭の全塑性モーメントに対応する曲率φpが、φp≧5.65×10-3/Dという関係を満足するものとし、前記鋼管杭の地中部の他の部分は前記部分よりも変形性能が低いものとした」ものであるのに対し、甲1発明の「鋼管杭9」がそのようなものか不明である点。…
…曲率の条件式を用いずに、地震応答解析の結果を踏まえて鋼管杭の強度を順に上げていくことが通常の設計により行われ得るとしても、これを越えて、発生曲率の大きい部分にのみ、局所的に高強度の鋼管杭を配置するまでに当然に至るとはいえず、少なくとも相違点3A又は3Bに係る構成を容易に想到できたということは困難というほかない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/697/092697_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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