令和4年(行ケ)10092【プログラム】<東海林> 中位概念化が新規事項追加でないとされた事例
※出願時の技術常識に基づいて、当初明細書中の具体的な記載を上位概念化してクレームアップした補正(中位概念化)が、新規事項追加にあたらないとされた事例。
⇒特許法17条の2第3項違反とした審決を取り消した!!
【第2次補正】=ゲームにおける「強さ」を、明細書中に明記されている「攻撃力及び防御力の合計値」でなく、「数値が高い程前記対戦ゲームを有利に進めることが可能な所定のパラメータである強さ」と中位概念(明細書中の具体的な開示より広い概念)に減縮した。
【請求項1(第2次補正後)】…数値が高い程前記対戦ゲームを有利に進めることが可能な所定のパラメータである強さの下限値及び上限値により定められた強さの各段階のうち、前記ユーザがいずれの強さの段階であるかを決定する…プログラム。(※下線部が第2次補正で追記した部分)
(判旨抜粋)
…当初明細書等に記載の発明と第2次補正後の明細書等に記載の発明は、課題を共通にするものであり、また、それらの技術的意義も同じである…。…「ゲーム」分野における技術常識に関して、「ユーザ」の「強さ」に、攻撃力及び防御力以外に、体力、俊敏さ、所持アイテム数等が含まれることが本願の出願時の技術常識であった…。…対戦ゲームにおいて、強さに大差のある相手ではなく、ユーザに適した対戦相手を選択するという発明の技術的意義に鑑みれば、当初明細書等記載の「強さ」とは、ゲームにおけるユーザの強さを表す指標であって、ゲームの勝敗に影響を与えるパラメータであれば足りると解するのが相当であり、「強さ」を「攻撃力と防御力の合計値」とすることは、発明の一実施形態としてあり得るとしても、技術常識上「強さ」に含まれる要素の中から、あえて体力、俊敏さ、所持アイテム数等を除外し、「強さ」を「攻撃力と防御力の合計値」に限定しなければならない理由は見出すことができない。言い換えれば、「強さ」を「攻撃力及び防御力の合計値」に限定するか否かは、発明の技術的意義に照らして、そのようにしてもよいし、しなくてもよいという、任意の付加的な事項にすぎない…。
Cf.審査基準の附属書A「新規事項を追加する補正に関する事例集」・事例7
⇒発明の課題を解決するために不可欠でない任意の付加的な要素は、新たな技術的事項を導入しない。
=平成29年(行ケ)10089〔医療用軟質容器〕<高部>、平成26年(行ケ)10087〔ラック搬送装置〕<設樂>
https://www.ip.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail?id=5951
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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