令和1年(行ケ)第10110号「電子記録債権の決済方法」<鶴岡裁判長>(出願人:三菱UFJ銀行)
*従来と同じ取扱いは本願発明の技術的意義ではない。
⇒人為的取り決め~発明該当性なし
(判旨要約)…
従前から採用されていたものであり…,下請法の運用基準の改訂前後で,取扱いに変更はない。…
本願発明の技術的意義…,電子記録債権の割引の際の手数料を債務者の負担としたことにある。
(判旨抜粋)
「本願発明は,従来から利用されている電子記録債権による取引決済における割引について,債権者をより手厚く保護するため,割引料の負担を債務者に求めるよう改訂された下請法の運用基準に適合し,かつ,債務者や債権者の事務負担や管理コストを増大させることなく,債務者によって割引料の負担が可能な電子記録債権の決済方法を提供するという課題を解決するための構成として,本願発明に係る構成を採用したものである。一方,本願発明の構成のうち,「(所定の)金額を(電子記録債権の)債権者の口座に振り込むための振込信号を送信すること」,及び「(所定の)金額を電子記録債権の債務者の口座から引き落とすための引落信号を送信すること」は,電子記録債権による取引決済において,従前から採用されていたものであり,また,「電子記録債権の額を(電子記録債権の)債務者の口座から引き落とす」ことは,下請法の運用基準の改訂前後で,取扱いに変更はないものである。そうすると,本願発明は,「電子記録債権の額に応じた金額を債権者の口座に振り込む」ことと,「前記電子記録債権の割引料に相当する割引料相当料を前記電子記録債権の債務者の口座から引き落とす」こととを,前記課題を解決するための技術的手段の構成とするものであると理解できる。…
本願発明は,電子記録債権を用いた決済方法において,電子記録債権の額に応じた金額を債権者の口座に振り込むとともに, 割引料相当料を債務者の口座から引き落とすことを,課題を解決するための技術的手段の構成とし,これにより,割引料負担を債務者に求めるという下請法の運用基準の改訂に対応し,割引料を負担する主体を債務者とすることで,割引困難な債権の発生を効果的に抑制することができるという効果を奏するとするものであるから,本願発明の技術的意義は,電子記録債権の割引における割引料を債務者負担としたことに尽きる…。…本願発明の技術的意義は,電子記録債権を用いた決済に関して,電子記録債権の割引の際の手数料を債務者の負担としたことにあるといえるから,本願発明の本質は,専ら取引決済についての人為的な取り決めそのものに向けられたものであると認められる。したがって,本願発明は,その本質が専ら人為的な取り決めそのものに 向けられているものであり,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則を利用するものではないから,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しない。」
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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