令和1年(行ケ)第10102号「立坑構築機」事件<高部裁判長>
進歩性〇
①*上位概念化の限界(引用発明の構成の一部を独立して抽出できなかった事例)…
~「旋回座軸受の一部のみに着目」する引用発明の認定が認められなかった。
②主・副引用発明の目的が異なる
⇒組み合わせるために、主引例中の目的の相違に対応する構成を要変更。
⇒阻害要因あり
<判旨抜粋~①の部分>
原告らは,引用例3に記載された発明においても,本件発明と同様の「内輪,外輪,転動体」の一体構造が開示されているから,本件発明は特別に何ら技術的意義を有しないと主張し,また,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明が認定されるべきであると主張する。しかしながら,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明を認定することは,旋回座軸受の一部のみに着目することになるが,これだけでは旋回座軸受が一体として機能することがないから,引用例3から原告らの主張するように発明を認定することは相当でない。
<判旨抜粋~②の部分>
引用発明1では,小さく分割することでその輸送を容易にしながら,ケ ーシングドライバの大型化を図ることのできる構造の,昇降フレームを提供することを目的とするのに対し,引用発明2’では,種々のケーシングチユーブに適用し, 掘削排土及びケーシングチユーブの回転の両操作を同時に行うことのできる回転式 ボーリングマシンを提供することを目的とするので,両発明の目的は異なる。…直ちに動機付け があると評価することはできない。…
上記の目的の相違に対応して,引用発明1の「昇降フレーム4」は,旋回ベアリング6を取り付ける「取付座4a」を分断するように分割する構成を有し,その「取付座4a」のサイズは一定であり,種々の径の旋回ベアリング6を固定できるよう拡大や縮小が可能なものではないのに対し,引用発明2’の割ライナー4及び割クランプ3は,種々の径のケーシングチユーブをクランプするために締付拡大可能なものであり,回転駆動される割ライナー4,及び割ライナー4を回転可能に 支承する側の割クランプ3の両者が,締付ジヤツキ5の動作によってその径を変更することのできるものである。このような引用発明2’の割ライナー4及び割クランプ3を,旋回ベアリング6の径の変更に対応するための構成を有しない引用発明1の「昇降フレーム4」上の「取付座4a」にそのまま取り付けることはできないから,引用発明1に引用発明2’を組み合わせるためには,分割可能な「昇降フレーム4」及び「取付座4a」という引用発明1の構成自体を変更する必要が生じる。そうすると,引用発明1に引用発明2’を組み合わせることについては,これを阻害する要因があるというべきである。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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