2024年02月19日
第1 改正の経緯
不正競争防止法等の一部を改正する法律(令和5年法律第51号)が、2023年6月7日に成立し、同月14日に公布されました。主な改正点及び施行日は、第2に説明するとおりです。
第2 主な改正点及び施行日
1 デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザインの保護強化
(1)コンセント制度の導入(2024年4月1日から施行)
他人が既に登録している商標と類似する商標は登録できないが、先行商標権者の同意があり、かつ、商品・役務の用途が異なる場合のように、実際に商標が使用される場面で棲み分けがなされている等により、需要者に出所混同のおそれがない場合には登録可能にする。
(2)他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和(2024年4月1日から施行)
商標を使用する商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている他人の氏名が存在せず、また商標構成中の氏名と出願人との間に相当の関連性があり、かつ、商標登録を受けることに不正の目的がない場合に、当該氏名に係る商標を登録可能にする。
(3)意匠登録手続、特に新規性喪失の例外適用手続の要件緩和(2024年1月1日から施行)
創作者等が出願前に意匠を複数公開した場合の救済措置を受けるための手続の要件を、最先の公開日に公開した意匠の証明書を提出すれば、その日以降の同一又は類似の意匠の公開についての証明は不要として、緩和する。
(4)デジタル空間における他人の商品の形態の模倣行為の規制(2024年4月1日から施行)
他人の商品の形態の模倣行為について、デジタル空間上でも不正競争行為の対象とし、差止請求権等を行使できるようにする。
2 営業秘密・限定提供データの保護の強化
(1)限定提供データの定義の拡張(2024年4月1日から施行)
データを他社に限定提供するサービスにおいて、データを秘密管理している場合も含めて、限定提供データとして保護し、侵害行為の差止め請求等を可能とする。
(2)技術上の秘密の使用等の推定規定の拡充(2024年4月1日から施行)
不正取得類型及び取得時悪意・重過失の転得類型のみに適用可能であった技術上の秘密の使用等の推定規定について正当取得類型における図利加害目的での管理任務違反の領得の場合や取得時善意無重過失の転得類型における悪意・重過失転化後の記録媒体等の保持の場合等に拡充する。
(3)損害賠償額算定規定の見直し(2024年4月1日から施行)
損害賠償額算定規定(不競法5条1項)の対象情報を技術上の秘密から営業秘密全般に拡充するとともに、対象侵害行為を物の譲渡のみならずデータ・役務の提供まで拡充する。また、被侵害者の販売等の能力又は販売等の阻害事情により控除される侵害数量分も許諾料相当額として増額して損害賠償を請求することを可能とするとともに、許諾料相当額の算定に当たり、不正競争があったことを前提として合意するとすれば被侵害者が得ることとなる額を考慮することができる旨を明文化する。
(4)裁定手続における営業秘密の閲覧制限(2023年7月3日から施行)
裁定手続で提出される書類に営業秘密が記載された場合に閲覧制限を可能にする。
(5)国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化(2024年4月1日から施行)
国内で事業を行う企業が国内で管理する営業秘密が国外で侵害される場合にも日本の裁判所に訴訟を提起でき、日本の不正競争防止法を適用することとする。
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。
文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:k_iida☆nakapat.gr.jp (☆を@に読み替えてください)