令和元年(行ケ)10147(髙部裁判長)
【商標】輪郭のないオレンジ色のみからなる色彩商標が,長期間使用されたが、自他商品識別力(商標法3条2項)×
※色のみの商標を完全に否定した判決ではない
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「色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべき」
1.商標法3条2項により自他商品識別力を獲得したかどうかは、商標が使用された期間及び地域、商品の販売数量及び営業規模、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情、当該商標やこれに類似した商標を採用した他の事業者の商品の存在、商品を識別し選択する際に当該商標が果たす役割の大きさ等を総合して判断すべきである。また、輪郭のない単一の色彩それ自体が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかを判断するに当たっては、指定商品を提供する事業者に対して、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。
2.輪郭のないオレンジ色(マンセル値:0.5YR5.6/11.2)のみからなる下記色彩商標が、指定商品である油圧ショベルに長期間使用されていたとしても、下記①~④などの事情の下では、商標法3条2項により自他商品識別力を獲得したものとはいえない。
①建設現場等において一般的に採択される色彩であること。
②油圧ショベル及びこれと需要者が共通する建設機械や、油圧ショベルの用途とされる農機、林業用機械の分野において、上記商標に類似する色彩を使用する事業者が相当数存在していること。
③油圧ショベルなど建設機械の取引においては、製品の機能や信頼性が検討され、製品を選択し購入する際に車体色の色彩が果たす役割が大きいとはいえないこと。
④色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるべき公益的要請もあること。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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